2008年9月27日土曜日

優しさは厳しさでもある

こんにちは

以前、NHKでETV特集「学校が変わる、子どもが変わる~民間人校長・4年目の挑戦」が放送されました。
杉並区和田中での藤原和博さんの「よのなか科」の授業を中心に、民間出身の校長がどう公立中学校を変えていったかというレポートです。
藤原さんはとにかくリソース(資源)の活用がうまいです。

地域本部という父母や和田中を応援してくれる地域の方々の組織を作る。
組織を作ったら活動してもらう。
図書館の運営、校庭の芝刈り、安全のための構内巡回などなど。
父母や地域の方々にお願いできる校内作業はお願いしてしまうわけです。
これらは普通の学校なら、みんな先生たちが行う作業です。
先生の仕事のうち地域の方たちが肩代わりできるものはやってもらおう、とうことです。
そうやって、先生の負担を減らすわけです。

藤原さんは、「先生たちにもっと生徒と向き合う時間を増やして欲しい」と言います。
本来、先生の主たる仕事は生徒と向き合い、いい授業をすることです。
たくさんの雑多な仕事のために、本来教師としてやるべきことができなくなっている現実があったわけなんですね。
それを解消するために、校長としてできる改革のひとつを実行したわけだったんですね。

また藤原校長は、年間授業時数を1200コマまで増やしました。
普通の学校では年間1000コマなんですが、カリキュラムを法令の範囲で組み直して、一こまあたりの時間を5分間減らすなどして、コマ数を増やしたんです。
授業って同じ内容を教えるにしても、5分間くらいなら短縮できるものです。
返って集中した授業ができるようになる。
その分コマ数を増やして、たとえば週3コマの英語を4コマにする。
初学者の場合、一度に長時間学ぶより、何度も学ぶ方が効果が上がります。

これも、1000コマでは教科書をこなすだけで精一杯であるという現実を打破するためです。
20%の余裕をもって授業をしてほしいという、校長としての願いからなんだと思います。
こうしてみると、藤原校長は部下の先生たちに大変優しい上司だと言えます。

しかし、逆から見ると非常に厳しい上司でもあることがわかります。

先生たちを雑用から解放する。
であれば、教師の本来業務である授業や生徒指導へ集中せざるを得ない。
授業コマ数を増やす。
となれば、教科書をただこなすだけではなく生徒の学力を向上させたり興味を引くような授業をせざるを得ない。
雑用が多くて忙しすぎる、授業時数が足らない、だからいい授業ができない、という「言い訳」をさせないのです。
部下である先生たちを、本来業務へと追い込み、その範囲ではしっかりと結果を出してもらう。
非常に厳しい上司であるわけなんです。

番組の中で藤原さんはこう言っていました(意訳です)。

 先生たちに大きく変わって欲しいとは思わない
  10%変わってもらう

上司として部下に無理な注文は出さない、無理させない。
そのために校長としてできるシステムを整える。
雑用などから先生たちを解放する手だてをこうじてやる。
でもその代わり、部下の先生たちにはしっかりやってもらうわけです。
10%は確実に変わってもらう。
一人ひとりの先生が10%ずつ変わってくれれば、学校は先生の数だけ累乗で変わるはずだ。

あれこれと小うるさくて雑用ばかりさせるような上司は、部下に言い訳を許してしまうんですよ。
結局本質的なところがおざなりになってしまう。
だから得策ではないんですね。
できる上司は、優しくてそして厳しいんです。

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