2008年10月15日水曜日

小役人攻略法

こんにちは

こんなタイトルで書くと、関口は役人をバカにしているのか、と思われるかもしれませんが違います。
ぼく自身、独立行政法人職員です。
独立行政法人とは、政府とは独立して行政を行う機関です。
行政とは、法律を執行すること。
法律を執行する担当者、イコール役人です。
ですから、ぼくも役人のひとり、ということになります。
だから、役人の気持ちも分かります。

スパコンの建設状況をホームページで知らせるため、ライブカメラを設置することになりました。
建設する建物の高さから考えて、20m以上のポールの上にカメラを乗せたい。
なるべくコストをかけないですむように、既製品の電柱を使うことにしました。

ところが、高さ14mを超えるコンクリート柱は建築基準法では「工作物」となってしまい、これを立てるためには一般の建物と同じく建築確認申請をし、許可をもらわないとなりません。
そんなことになったら、申請図を作成したり、構造計算をしたり、手続きをとったりして、いったいいつになったら柱を立てられるかわからなくなってしまいます。
こりゃ困った。

でも、既製品の電柱です。
既製品ですから、電柱として立てるには何ら問題のない製品です。
電線を支持する電柱は、建築基準法ではなく電気事業法に従って立てます。
もちろん今回の20m電柱も、電気事業法で定められた施工法で立てるわけですから、絶対に倒れる心配はない。
なので、この電柱は建築基準法のコンクリート柱ではなく、電気事業法の電柱だと認めてくれれば、建築確認申請は不要になります。

また、建築基準法にも緩和規定があります。
工事用の仮説物であれば、建築確認申請は不要という条文を見つけました。
なので、この電柱も工事用の仮説物だと認めてくれれば、建築確認なしに立てることができるわけです。

施工者さんに、万が一倒れても近隣住民や一般の通行人に被害は及ばない場所であることを示すために、どこに立てるのか配置図を作ってもらいました。
また、万が一でも倒れないことを示すために、電気事業法で定められた施工法も図面にしてもらいました。

ここまで予習をして、市役所建築安全課に相談に行きました。
安全課の技官の方に、なぜ20mもの電柱を立てたいのか、その目的を説明しました。
これをやる意義を伝えたんです。
その上で、図面を示し、電気事業法の電柱として、あるいは建築基準法の緩和規定として見なせるか、判断を仰ぎました。
その結果、電線が張っていないので電柱としては認められないが、工事用の仮説物としては認めていただくことができたんです。
やったー!

行政マンの役割は、法令を守ることです。
法令に違反することは絶対にできません。
でも、法令にも解釈や裁量の部分もあって、それは担当技官の判断に任されています。
行政との交渉は、この解釈や裁量を認めてもらうことなんです。
そのために、担当行政官がその解釈や裁量を認めやすい状況を作ることです。
 
どんな仕事でもそうですが、要は
 
 相手に安心してもらう
 
ことです。
行政官だってすべての法令に精通しているわけでもありません。
だから、こんな法令もありますよ、と知らせることも大切。
こんな事例もありますよと、前例も知らせることができれば、より万全ですね。
行政的な規制はすべて公共の安全のためにありますから、安全であることを示すことも大切です。
そうやって、行政官が安心して解釈や裁量を認められる状況を作るのが、行政との交渉を上手く進めるコツだとぼくは思っているわけです。

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