2009年2月17日火曜日

リスクテイクと交渉力

こんにちは

またまた、よく怒るぼくの元上司の話です。
この人はとても交渉力があります。
他部署とも、他社とも、たいてい上手く交渉をまとめてきてしまいます。
ほぼこちらの要求を相手に飲んでもらえる。
成功率9割以上ですね。

反対に、何度交渉に臨んでも失敗して帰ってくる人もいます。
相手に押し切られるだけ。
ちっともこっちの言い分を聞いてもらえない。
成功率1割未満。

この二人、いったいどこが違うんでしょうか。
元上司は確かに強面(笑)。天然の利を活かしていることも確かです。
飲み友だちも多く、人脈も広い。
でもそれだけじゃないみたいなんです。
よーく観察してみました。

交渉上手な元上司のやり方を観察すると、引くところは引いていることが分かりました。
相手の言い分もちゃんと認めて、相手の立場も保つような配慮がある。
そのために譲歩できるところはするんですね。
その代わり、自分の立場も相手に認めてもらう。
相手からも譲歩を引き出しているんです。
だから、お互いwin-winの関係になれる。
相手だって後ろには自分の会社や自分の部署という組織があるわけです。
自分の会社、組織に戻ったとき、体面を保たなくちゃならないし、おみやげも持って帰らないとなりません。

交渉下手な人のやり方を見ていると、意外と「強引」なんです。
自分の主張だけを押し通そうとするんです。
絶対に引きません。譲歩しないんです。
当然それでは相手は納得できませんよ。
交渉決裂は必然なんです。

内田樹『疲れすぎて眠れぬ夜のために』角川書店\1500-にこうありました。

###
すぐれたビジネスマンは「リスクを取る」と言いますが、凡庸なサラリーマンは「リスクを負う」と言うからです。
「リスクというのは負わされるものだ」というふうに思う人は、リスクをできるだけ回避しようとします。
確かにリスクは回避されますが、リスクを取らない人間は同時に決定権をも回避することになります。そういう人はビジネスには参加できません。
「俺がリスクを取る」と言った人がそのビジネスに関する決定権を持ち、リーダーになるのです。
「リスクを負いたくない」と言ってリスクを取ることを忌避して、決定権を他人に譲った人間はレイバーを担当するしかありません。
ビジネスとレイバーの差は、ですから常雇いか臨時雇いの違いでも、時給やポストの格差でも、資本金の規模でもありません。
その人が「リスクを取る」という決断をできるかどうか、その一点にかかっています。(72p)
###

譲歩することは、リスクを取ることでもあるんですね。
相手に譲ることができるということは、自分も不利益を覚悟するということです。
譲歩したからには、そこに責任も発生します。
自社、自部署に戻ったとき、その譲歩が正しかったことを同僚、上司にも納得してもらわなくちゃいけません。
下手すると責任問題にもなりかねないことなんですよ、譲歩って。
それだけの覚悟があるのかどうか。

相手がそこまでの覚悟をしたとき、自分も自分の責任の範囲で覚悟しようと、人は思うものです。
だからお互いに譲歩しあえ、交渉も成立するのです。
それが、交渉の「原理」なんだと思います。

交渉下手な人は、あんがい無責任なのです。
無責任だから、リスクを取れない。
無責任だから、譲歩できないんです。
それは自分の権限と責任の範囲を自覚していないということでもある。
相手が覚悟する気がないのなら、こっちだって覚悟なんかできませんよ。
言い分を聞こうという気もなくなるのは当たり前なんです。

リーダーになれる人は、交渉も上手くいく。
それは、リスクが取れるからなんですね。

0 件のコメント: