2009年6月3日水曜日

義務教育は普通教育である

こんにちは

最近、小学校でもパソコンを教える授業をしているようです。
我が子がお受験するのでいろんな私立小学校の案内をながめていますが、ほぼすべての学校でパソコン授業をひとつのウリにしています。
確かにITは現代人にとって必須の技術であることは確かです。
パソコンの使えないおじさんは、会社でも肩身が狭いのは事実。
だからって、小学校で教える必要があるかどうかは別の問題です。

で、実際にどんなことを教えているのかというと、インターネットでWEBを閲覧したり、電子メールを使ったり、せいぜいホームページを作ったりすることのようです。
中には、一太郎やワードといったワープロソフトの使い方を教えていたりするだけの学校もあったりして。
お金のない公立校だと、とんでもなく古いパソコンで、ずいぶんと昔の一太郎で教えていたり。

IT分野の技術的進歩は早いので、今習ったこと、習熟したことはあっという間に陳腐化してしまいます。
今の子どもが大人になったときも役に立つ技術かどうか疑わしい。
ならば、ワープロの使い方、ホームページの作り方なんか小学校で教えることはないと思うのです。
必要になったときに、自分で学べるだけの基礎があればいい。

かく言うぼくも、今の職場に入ってからオフィスやエクセルなどビジネスソフトを使う必要に迫られました。
そのときぼくは35歳にもなっていて、中年と言われる年齢でした。
学生時代からコンピュータはいじっていましたが、ビジネス目的で使ったことはなく、簡単なプログラムを組む程度の使い方したことがなかった。
それまでキーボードも、片手で人差し指だけで打っていました。

今の職場に入った頃はまだ個人で持てるほどパソコンは安くありませんでしたので、土曜日曜と2日間職場にもぐりこんで練習しました。
それでほぼ仕事に支障のない程度の使い方はマスターできました。
キーボードのブラインドタッチも、毎日退勤時間以後20分職場に残って、フリーソフトのタイピングソフトウェアを使って練習し、3ヶ月くらいでほぼマスターしました。
必要に迫られてちょっとの努力ができるなら、パソコンの使い方なんか誰でもすぐ覚えられるものなんです。

まして今の子どもなら、学校で教えなくたって興味をもって覚えちゃうもんだと思います。
先生なんかすぐ追い越しちゃう。
中高年のおじさんのようにパソコンに対する恐怖感もないし、面白いからね。

ところで日本国憲法には、こんな風に書いてあります。

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第二十六条  すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
○2  すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
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「普通教育」と書いてありますよね。
この普通教育って何なのでしょう?
そう言えば、ぼくが行った高校は「普通課」でした。
普通の高校ってことかと思っていましたが、筑波大附属駒場高校なんていう一流校も普通課だったので、わけがわからなくなった思い出もあります。

ある言葉を理解するためには、その反対語を考えてみるといい。
「普通」の反対語だから「特別」「特殊」?
まさか「異常」?
異常教育なんてあるの??

実は「普通教育」の反対語は「職業教育」なんです。
だから、義務教育を終えて進学する高等学校は、普通課と職業課に分かれるわけです。
つまり普通教育とは、職業には直結しない一般的な知識、技能を教育することだと言えるのです。
「教養教育」と言ってもいいかもしれません。

憲法において<義務教育は普通教育である>と規定しているのです。
だから義務教育では、個別の職業のための知識、技能ではなく、もっと広く教養を与えて、フレキシブルな人間に育てることを求めているんじゃないのかって思うのです。
そういう教養人としてしっかりと育った子どもが、義務教育を終えて職業に就いたらOJTですぐ使える人材になる。
高等学校から職業課に進んでも、社会の中堅になるべく専門技能を磨くことができる。
普通課の高等学校に進んだ子は、より教養を深め社会を引っ張っていく人材に育っていく。

反対に、あまりに子どものうちから個別の職業教育をしてしまうと、小さな人間になってしまうよ、という意味もあったとも思えます。
丁稚奉公の否定という意味もあったと思うのです。
だから、小学生にパソコンを教えるのは、憲法の趣旨から考えて間違っていると思うのです。
それより他にもっとやることがあるだろう、と思うのです。

そもそも学校は、学校に行かなければ身に付かない知識、技能を教えてもらうところなんだと思うのです。
ちょっと強制してもらって、負荷をかけてもらって苦労しないと身に付かないもの。
子どもの好き好みに任せていたら、絶対に身につかないもの。
パソコンの使い方なんかより、そういう教養こそが長い人生で役に立つ。

憲法を読み返してみて、そんなことを思いました。

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