2009年6月22日月曜日

残業は損 その2

こんにちは

前回書いたように、残業とはそもそも生産調整のためにあり、労使双方にメリットがある場合に限り毎年度調停を結んだ上で、法定8時間労働時間を超えてすることができるものなのです。
すなわちそれは、労働時間に生産量が比例する仕事を想定した規則である、とわかります。
つまり、工場の生産ラインでの労働が想定されているわけです。
需要に生産が追いつかない場合、製造ラインを長時間稼働させる。
そのために労働者に残業させる。
それにより会社は機会損失を防ぎ、収益が上がる。
そうすれば、残業代のみならず基本給だって上がるわけです。
残業代は長い労働時間に付随したものなので、もらって当然なものです。
でもそれだけでは労働者のメリットにはなり得ない。
基本給が上がってこそ、労働者のメリットとなるものなのです。

ところが、工場労働者以外、いわゆるホワイトカラーの場合はどうでしょうか。
ホワイトカラーの労働者は、労働時間に生産量が比例するとは限りません。
長く働いたからアウトプットが増えるというものでもない。
もちろん、ある程度は比例する仕事もありますよ。
でもそれはルーチンワーク的な部分だけに限られます。

周りの人を見渡してみましょう。
たくさん残業しているのにアウトプットが少ない人もあんがいいるでしょう。
ホワイトカラーの仕事をしている人なら、誰もが経験していることです。

公務員数は必要な業務量と無関係に膨張する、という法則を見つけたパーキンソンという経営学者をご存じと思います。
パーキンソンはそれ以外にも、面白い法則をたくさん見つけています。
たとえば、

  仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する

いやー、アイロニカルですねー。
どんな仕事も、3時間あると思えば3時間かかってしまうし、5時間与えられれば5時間かかる。
逆に、1時間しかなければ、追い込まれて何とかしてしまうものなんです。
仕事の量は変わらなくてもそうなんです。

ホワイトカラーの仕事はこうなりがちなんです。
残業してもいいよ、と言われれば、残業してしまうのです。
仕事量も変わらず、しかもその質だってそれほど変わらない。

アウトプットか変わらないのですから、その労働によって会社の収益は変わりません。
でも残業が増え、残業代を支払わないとならない。
そういう場合、会社はどういう給与設計をするでしょうか。
収益が上がらないなら総人件費を増やすわけにはいきません。
なので、総人件費から残業見込額を予め控除しておきます。
その残りを基本給とするはずです。
つまりそれは、基本給を下げることになってしまうのです。
これって労働者にとってハッピーなことではないですよねー。

よく、残業代もらわないと生活が立ちゆかない、なんて言う人がいますよね。
だから、したくなくても残業しなくちゃならないって。
それは基本給が安いからでしょう。基本給だけでは生活が維持できないことに他なりません。
たくさん残業するがために、基本給が安いままになっている可能性が高いんです。
会社側が残業代を含めて、社員の給料設計をしているからなのです。

残業しないと生活が成り立たないとどうなるでしょうか。
労働者は仕事を終わらせるために残業するのではなく、残業代を稼ぐために残業するようになります。
なので、勤務時間中もだらだらし始め、わざわざ残業しなければいけない状況を作り出します。
ますます、労働時間とアウトプットは相関しなくなってしまいます。
残業代を支払うのは法律で定められていますから、会社側はそのために基本給をさらに減額するしかなくなります。
すると、労働者はますます残業しないと必要なお金を稼げなくなってしまうと言うわけです。
これは労使双方にとって悪循環です。とっても損。

吉越浩一郎『デッドライン仕事術』祥伝社新書¥740-にこうありました。

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朝から夕方まで8時間、クタクタになって頭が痛くなるぐらいまで集中して働き、家に帰ってからリラックスした時間を過ごすのが、本来あるべき姿ではないだろうか。
日本ではそのリラックス・タイムを会社に持ち込んでいるから、残業がなくならないのである。(30p)
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前にも書きましたが、労働基準法で1日の労働時間は8時間以内が原則である、と定められています。
これは、工場などで働く人たちが決められた仕事を集中してでき、労働災害も起きず、不良品も作らないための「適当な」時間であると経験的に分かったからだと思います。
ホワイトカラーだって、8時間集中して仕事をすればくたくたになるはずです。
そして退勤して自分の時間をリラックスして満喫する。
疲れをすっかり取って、また翌日バリバリ働く気力と体力を復活させる。

人間って制限がある方が逆に生産性が上がるんです。
残業しないぞって思うと、その中でなんとか仕上げようとする。
すると能力も上がるんです。
会社側も残業が少なくなれば、その分、基本給を上げざるを得ない。
基本給が上がれば、それだけでも十分生活を維持できるようになる。
会社だって残業が少なければ労務管理が楽ちんになりますしね。
労使双方、ハッピーになれます。

もちろん時には残業せざるを得ない状況も出てくるでしょう。
でもそれは必要だからするのであって、決して生活するために残業代をもらうためじゃない。
そういう場合の残業代はちょっとした「ご褒美」にもなります。
だって生活給じゃないんだから。
家族とちょっと贅沢な外食なんかに充てることも可能なんです。

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