2009年9月13日日曜日

続・ペアシステムのススメ


こんにちは

どこの職場にも忙しそうにしている人がいます。
毎日毎日残業残業。
でもその割にアウトプット量は少ない。
なぜなんでしょうか。

こういう人たちを観察してみると、

 とても仲がよい

ことに気づきます。
いつも誰かと一緒に仕事をしているんです。

以前「ペアシステムのススメ」というコラムを書きました。
ひとつの案件、プロジェクトは二人で担当するといい、という話。
でもこれを誤解してはいけませんよ。
ペアシステムは、二人で同じ時間に同じ仕事を一緒にすることではないのです。

管理職のくせに、いつも部下を伴って会議に出てくる人がいます。
本来管理職しか出席が必要じゃない会議なのに。
自分が担当する案件について、会議に必要な情報は事前に把握して会議に臨むのが当たり前です。
でもそれをしない、あるいは十分理解できないから自信がない。
だから直接担当する部下が臨席していないと、ちゃんと受け答えできないわけです。
なので二人で会議に出席する。
これは仕事時間の二重計上ですよ。
一人でやるべきことを二人でやっている。
時間当たり、ひとり当たりのアウトプットは半減です。
ならば、ひとり当たりの時給も半額にしないとダメですよね。

本来会議に出席しなくてよい部下は、本来その時間を別の仕事に使うはず、使えるはずなんです。
自分の本来するべき仕事にね。
それによってアウトプットを増やせるはずなんです。
その時間を会議で奪われるから、残業しなくちゃならなくなる。
自分の職責に自覚的であり、きちんと分担ができれば無駄な残業もなくなり、忙しさも緩和され、余裕も生まれるのです。

みんなで仕事をする場合、時間をやりくりするためには分担するのが原則です。
一つの仕事を、多数の仕事単位に分割し、それぞれのメンバーに割り振り、締め切りを決める。
割り振られた仕事を、それぞれの担当者が責任と権限を持って一定時間でこなす。

仕事は「作業」と「判断」とで成り立っています。
通常、作業は部下が、判断は上司が行うものです。
作業には時間がかかります。
だから十分な作業時間を部下に確保してやることが、上司の役目です。
しっかりとした十分な作業がなされていれば、上司は短時間で間違いなく判断することができます。

建築家安藤忠雄さんは、25件のプロジェクトを部下25人とペアシステムで平行して進めています。
そんなにも多くのプロジェクトを平行して進められる理由は何か。
それは部下に十分な作業時間を与え、現場にも長時間行けるだけの余裕を与え、部下が確実に作業を貫徹できるから、安藤さん自身が判断のために使う時間を短くできているからなんです。
そういう分担がきちんとできているから、安藤事務所ではたくさんのアウトプットが生み出せているんです。

分担されたそれぞれの担当者が、その仕事をたった一人で黙々と作業することができるかどうか。
そしてそれをまた集積し、一つの仕事に再度組み上げるられるかどうか。
それを元に判断することができるかどうか。
それが短時間に仕事が終わるかどうかの分水嶺なんです。
短時間に一つの仕事が終わるから、すぐ次の仕事へと取りかかれるわけで、結果としてアウトプットを増やすことができるのです。

ところが仲のよい人たちは、この分担がまったくできていない。下手なんです。
自分に割り当てられた仕事を、たった一人で黙々と作業する時間がすっぽり抜けているのです。
つまりそれは、一人で仕事をするだけの能力がそのメンバーの誰もに欠けているのだと思います。
だからみんなで集ってあれこれやって、悩んじゃったりして時間を浪費してしまうのです。

もちろん、打ち合わせが必要ないわけではありませんよ。
きちんと明確に分担と締め切りを決めるために、打ち合わせは必要です。
でもその打ち合わせは、より合理的に作業を進めるために行うものです。
打ち合わせ自体は、アウトプットではありません。
作業するからアウトプットも生まれるんです。
だから、会議をやって仕事した気になっちゃいけないんです。
会議だけでは、成果は何も生まれないのです。

作業中はたった一人で黙々と仕事をしていかなくてはいけません。
判断も誰かと相談しながらするのではなく、たった一人で自分の責任で行うものなのです。
その意味で、仲良しではダメなんです。
各人が孤独に耐え、責任を負う覚悟がなければ、アウトプットは生まれないのです。

永守重信『奇跡の人材育成法』PHP文庫\419-に<去ってほしい社員の条件>が書いてありました。

 1,知恵のでない社員
 2,言われなければできない社員
 3,すぐ他人の力にたよる社員
 4,すぐ責任転嫁をする社員
 5,やる気旺盛でない社員
 6,すぐ不平不満を言う社員
 7,よく休みよく遅れる社員(146-147p)

ぼくの尊敬する小学校教師の向山洋一さんは、学級目標に「一匹狼のたくましさと、野武士のごとき集団を」を掲げていました。
つまり、一人ひとりがたった一人でもことをなせるだけの力量を身に着けることが大事だと、子どもたちに伝えていたんですね。
それに加えて得意とする分野を一つでも二つでも持つ。
そういうメンバーが集まって協力し合うから、一人よりもパワーアップするんです。

ぼくは仕事も同じだと思っています。
単なる仲良しではいけない。
たった一人の孤独の中でも、自分の責任を黙々とこなすだけの力量を持つ人間。
そういう一匹狼たちが野武士のように集ったとき、大きなことができるんだと思っています。

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