2010年3月3日水曜日

知は力なり

こんにちは

前便で、仕事は24時間、なーんてかっこいいことを書いちゃいました。
こう書くとまるで「仕事人間」「仕事マニア」「仕事狂」だと思われちゃうかも。
実を言うと、勤務時間中も含め24時間ずっと家族のことも考えていたりします。
勤務時間中の8時間は作業に集中しています。
ダンドリが決まっていますから、作業中は意外と頭を使っていない。
手や体を動かしながら、「今日の晩ご飯、何かなー」とか「家に帰ったら子どもと何して遊ぼうかなー」とか「週末、あそこに買い物に行きたいなー」なんて考えているんです。
こんなふうに勤務時間中もちょびっとはプライベートのことも考えているんです。
それがプライベート時間のダンドリにもなり、家族との時間を充実させる原動力にもなると思うのです。
要は一人の人間ですから、公私を完全には分けられません。
勤務時間中もそれ以外も、公私はそれぞれグラデーションになっているし、メリハリを付ければいいんだし、公私をきっちりと分けるよりその方が合理的、効率的なんだと思うんですよ。
そうやってワークライフバランスを上手にとっていくのがいいと思っています。

さて、隣の係の若い同僚が何やら悩んでいるよう。
隣の係の人同士で不満をぶつけ合っているのが聞こえました。
ぼくの所属するセクションは、建設工事の監督をするのが主務です。
工事は平日の日中だけではできず、どうしても休日や夜間に行わなければならないこともあります。
さらに地方の事業所へ出張して監督する必要もあります。
通常、自分の所属する事業所で残業を行えば、残業手当がもらえます。
出張すると残業手当はもらえません。

今回、出張先で夜間の立ち会い業務が必要になっていたのです。
で、若い同僚はそれを不満に思っていたんですね。
徹夜で立ち会わなくちゃ行けない仕事なのに、出張しての仕事だから残業手当が出ないと思ったんですね。
それじゃあ、がんばり甲斐がない。やる気もなくなる。どんよりした顔にもなる。

ぼくは行政書士など法律系資格も持っていますし、法律に関する基礎的な勉強もしてきました。
技術屋さんは法律に疎いので、損していることも多々ありますよ。
さっそくそれをご披露してあげました。

確かに労働基準法にはこう書いてあります。

  第三十八条の二
  労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、
  労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。

これを根拠として通常出張や外勤したときは残業手当が支払われないのです。
ここでのミソは「労働時間を算定し難いとき」です。
労働時間を算定するのはどうするのか。
出張していたらタイムカードを押せない、ということもありますが、労働基準法では労働者の労働時間の管理は管理監督者、すなわち上司がすることになっているんですね。
上司が自分の部下たちがいつ出勤したか、いつ退勤したかを管理するのが原則となっているのです。
ですから出張などで上司の目の届かない場所にいる部下の、出退勤の管理は不可能となってしまうのです。
そのため法律で「労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす」という<みなし規程>を設けあるのです。

逆に言えば、上司が労働時間を算定できるのであれば、出張中だろうと残業手当を支払えるし、支払うべきなんです。
若い同僚の今回の仕事には予め工程表が定められており、何時までその仕事がかかるか明記してあります。
残業が必要な根拠も明白です。
上司に事前説明をし、超勤命令を出してもらうことも可能。
念のため、仕事が開始されるときや終了したとき、ポイントとなるときに上司に電子メールを打つようにアドバイスしました。

以上を聞いた若い同僚の顔はぱっと明るくなり、やる気に満ちた顔になりました。
さっそく上司に説明に行きました。
果たせるかな、ちゃんと残業手当は支払われたのです。
よかったですねー。
当然ながら、若い同僚は出張先でいい仕事をしてきました。
徹夜仕事でも元気元気!

労働衛生工学の研究でも、きちんと賃金の支払われた残業の場合の事故率は低いことが分かっています。
サービス残業中の事故は多いんです。
まあ、サービス残業だと思うとダラダラいい加減に仕事をしてしまうのは、人間として当然ですからね。
きちんと賃金が支払われれば、それに見合った仕事をしようという意欲も湧く。
意欲があれば集中もしますからミスも減り、事故も減るのは当たり前でしょう。
事故に至れば、残業代を減らすことなんかよりもっと大変なコストがかかります。
コストだけではなく、場合によっては会社の信用、信頼も落とす。
それは会社にとっても損なことです。

今回の件もたぶん、出張中の残業について上司にちゃんと言わないと手当をもらえなかった可能性は高い。
上司だって法令に詳しいわけではないし、部下がどんな仕事をしているのかきちんと把握している上司も少ないですから、言われなければ普通の出張と同じに扱っちゃったでしょうね。
やっぱり、知は力なり、なんだと思います。
何か違和感を持ったら悩んでないで、調べたり人に聞いたりする。
それが自分を守り、会社に貢献していく道だと思っています。

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