2010年3月7日日曜日

リスクとデンジャー

こんにちは

昨日は休日出勤で、ケーブル切り替えの立ち会いをしました。
建設が始まったばかりの研究棟敷地のど真ん中に、電話線など重要なインフラケーブルが埋設されています。
この研究棟を設計したときは、基礎には当たりそうもないから念のため切り替えの迂回ルートも設計しとくか、くらいの気楽に思っていました。
切り替えるにしても、建物完成までにゆっくりやればいいや、とね。

ところが工事着工して測量をしてみると、基礎杭ギリギリの場所に埋まっていることが分かりました。
やっぱり杭を打つ前に切り替えなくちゃいけないようです。
工程上与えられた時間は1ヶ月あまり。
ちょっと焦りました。
それでも埋まっているインフラケーブルは数本だと図面上分かっていましたから、それほど大変ではないだろうと高をくくっていました。

さっそく施工スタッフにより埋まっているケーブルの調査をしてもらいました。
するとなんと、想定していたケーブル数の3倍ものケーブルが見つかっちゃったんです。
焦りましたよー。
これらをすべて切り替えるとしたら、三日や四日かかっちゃいそうです。
インフラを三日も四日も停止するのは難しい。
さすがのぼくも気が重くなりました。
それが分かった日はよく眠れませんでしたよ。気が弱いね。

ところがさらに調査を進めると、そのケーブルの半分は途中で切断されており使われていないことが判明。
念入りな調査のおかげで、気分も上向き。
これなら1日で切り替えできそうです。
優秀なスタッフたちと工程を検討し、10時間程度のインフラ停止で切り替えられるよう段取りました。

ただ、1本だけよく分からない信号ケーブルがありました。
切り替えるためにはいったん切断して、迂回ルートへ新たに配線したケーブルと再接続する必要があります。
この不明なケーブルを切断しても大丈夫かどうか不安を抱えたまま、当日を迎えました。
念のため、このケーブルを切断する前に被覆を剥いて電圧がかかっているかどうかチェックするよう、スタッフに指示をしました。
電圧がかかっていないなら、そのまま切断しても大丈夫。
でも電圧がかかっている場合、切断することによって末端側の電圧が0になり、予期しない制御が働く恐れがあるのです。

ケーブル被覆を剥いてみると、直流24Vが印加されていることが判明。
あちゃー、そのまま切断できないぞー。
選択肢は三つ。
1.予期しない制御が起こってもあきらめることにして、そのまま切断
2.何もせずそーっと残置する
3.何とか電圧をかけたまま切り替える
1はリスクが大きすぎます。この信号線が何に使われていて、何が起こるか分からないのですから、リスク評価もできません。
2もリスクが大きい。今は残置するにしても、杭工事で切断される恐れもある。その時に、何が起こるか分からないのも嫌です。
結局3しかやりようがない。
ではどうするか。

スタッフを現場事務所に集合してもらって、ホワイトボードに図を描きながらやり方を検討しました。
さすが優秀なスタッフ、あっという間に方針が決まりましたよ。
こうして電圧をかけたまま、このケーブルの切り替えも完了させることができました。

佐藤富雄『自分を変える魔法の口ぐせ』かんき出版¥1400-から引用します。

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心配事の80%は起こらないといわれます。
起きてしまうのは、残りの20%だけです。
ただし、そのうちの80%は、順序立てて整理し、準備を整えて対応すると、心配事には至らず解決ができます。
つまり、その時にならなければ手の打ちようがない、いわゆる心配に値する本当の心配事は、全体の4%に過ぎないということです。(71p)
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日本語の「危険」には、英語でいう「リスク」と「デンジャー」の二つの意味が混在しています。
そのため日本人は、リスクとデンジャーの区別があまり得意ではないように思います。
リスクは上手くコントロールすることによって回避できる危険のこと。
デンジャーはいくら考え心配しても避け得ない危険、人智を超えた災害のことです。
これらを混同してしまうと、心配しても仕方のないことにばかり注意を向けてしまって、避けられたはずのリスク管理が疎かになって、事故に至る場合も多くなってしまう。

佐藤さんの80%の法則でいえば、

 ・心配事の80%は起こらないことなんだから気にするな
 ・残りの20%のうちその80%である16%のことはリスクなんだから
   一生懸命考え、対処しろ
 ・最後に残った4%はデンジャーなんだから、起こったらあきらめろ

ということですね。
これらを峻別することが大切なんです。
起こりえない80%のことをうじうじと悩まないのが、何をするにしても初動を早くするコツ。

昔の人は、人事を尽くして天命を待つ、と言いました。
人事とはリスク管理です。
リスク管理はやったらやっただけの成果が得られるものです。
コントロール可能だからね。
リスクを一生懸命考え、対策を練り、対応することが人事を尽くすということ。
人事を尽くしたら、あとは運だから何があっても仕方がない。
そう腹を据えることですね。

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