2010年8月18日水曜日

無茶はするな、無理をしろ


こんにちは

11月に試験のあるメンタルヘルスマネジメント検定の勉強を開始しました。
春にⅢ種とⅡ種に合格したので、今度はⅠ種(マスターコース)に挑戦です。
Ⅰ種マスターコースの対象者は、会社の経営者や労務管理者。
今やメンタルヘルスマネジメント抜きに会社経営はできないってことなんですね。

ちょこっと勉強を始めてみて、いきなりすごい事実を知りました。
日本の年間自殺者数は3万人を超えていますが、未遂者はこの4倍12万人もいるのだそうです。
つまり自殺したい、自殺しようとする人は毎年16万人。
実際に死んでしまうのが3万人なのだそうです。
びっくりするような人数です。
そんなに多くの人が死にたいと思って、自殺を試みているんです。

もっとショッキングだったのは、未遂者12万人のうちかなりの人が後遺症を残して生き残っていること。
飛び降り自殺を試みれば、未遂に終わっても複雑骨折など完全に治療できない障害が残ります。
首つり自殺を試みれば、脳への血流を遮断するわけですから、未遂に終わっても脳に強烈なダメージを与えてしまうのです。
植物状態になってしまう人も多いのです。
人生が辛くて自殺しようとして、もっと辛い状況になってしまう。
亡くなってしまう人も痛ましいですが、未遂で生き残る人もかなり痛ましいんです。

で、産業医学的には自殺の原因はメンタルヘルス問題であると理解されています。
そして勤労者のメンタルヘルス問題の原因は過重労働だと分かっているのです。
過重労働の中でもメンタルヘルスに及ぼす影響が強いのが、長時間労働だということも証明されていることなのです。
もちろんそれ以外の要因も多々あるのですが、先ずは長時間労働を減らすことがメンタルヘルス問題を減らすための第一歩であり、最重要課題なんです。

脳科学の最新成果を応用すれば、過重労働はワーキングメモリの使い方の問題になります。
ヒトの大脳前頭前野にあるワーキングメモリ。
そこを使ってヒトは思考していることが研究で分かってきました。
それはたった7つしかない。
この7つのメモリに記憶を入れたり出したり操作したりして、ヒトは思考しているのです。
ワーキングメモリ7つ全部に記憶が常駐してしまうと、それらを操作するスペースがなくなってしまい、考えることができなくなります。

忙しくて次から次へとやらねばならない仕事が押し寄せる。
たちまちワーキングメモリはいっぱいになってしまう。
考えることができなくなれば、意識はどんよりとしてしまいます。
パニックに陥り、押し寄せてくる仕事のどこから手を着けてよいかわからなくなります。
仕事ははかどらず、合理的な判断もできなくなり、ますます長時間労働しなければならなくなります。
過重労働、長時間労働はこのような脳の状態を生み出します。
そしていったん「死にたい」と思うと、もうその他の選択肢を考えることができず、それのみに囚われてしまうのです。

そこから抜け出すためには、時間の余裕が必要なんです。
ちょっと気を抜いてリラックスする。
頭に詰まった課題をいったん出して、頭を空にする。
ワーキングメモリに空きスペースができれば、正常に考えられ、課題を合理的に解決していく道筋がわかってきます。

もちろんたまに長時間残業することも必要でしょう。
頑張るときだって年に数回はあってもいい。
頑張って課題を達成して、成就感、達成感を味わうことも大切。
その方が腕も上がりますしね。
でも年がら年中長時間残業してはいけない。
ホッと一息つく時間もつくらなくちゃいけない。

ぼくの労組委員長としての問題意識もここにありました。
制度的にもたまに一息つく時間を生み出すようにしたいと思ったのです。
使用者が残業を命じるためには、いわゆる36協定という労使の合意がなくてはなりません。
この協定にはどんなときに何時間まで残業を命じていいか、明記されています。
そこにたくさん残業を命じるのは「連続2ヶ月まで」という条項を付け加えることができました。
2ヶ月頑張ったら次の1ヶ月はちょっとゆっくりしようよ、ということです。
プロジェクトマネージメントを研究しているトムマデルコによれば、根性もせいぜい2ヶ月、なんだそうです。
根性で頑張って成果が上がるのは1ヶ月、せいぜい2ヶ月間で、それを超えると効率がガクンと落ちて、頑張っても頑張っただけの成果が得られない。
そういう研究成果も取り入れたつもりです。

今村暁『子供の成績を決める習慣教育』PHP文庫¥533-にこうありました。

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私は、「無茶」をさせることはよくないと思っていますが、その子なりに「無理」をさせることは必要なことだと思っています。
「無茶」というのは、365日毎日、夜12時過ぎまで勉強させるようなことです。
ときどき12時過ぎまで勉強させるのは、「無茶」なことではありません。(195p)
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子どもの勉強も同じなんですね。
時に「無理」させることは子どもの成長を促すけれど、いっつもさせちゃいけない。
それは「無茶」なんです。
無茶は疲労感だけ与えます。
だって終わりの来ない地獄だからね。
今村さんは同書でこう書いてもいます。

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ルーティンワークだけをしていて一日8時間会社にいても、達成感はわいてきませんし、残業を4時間して、12時間働いても達成感などは生まれてきません。
それよりも、「今日は、5時までにこの書類を仕上げて、定時に帰る」と決めて仕事をしたほうが、仕上がったときに達成感を持てるはずです。
つまり、時間の長さではなく、量によって達成感は生まれるものであり、あるいは、時間の短さによって達成感は生まれるのです。(82p)
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ただ長く働くだけでは達成感、やり遂げたことによる爽快感を味わうことはできません。
ただただ疲れるだけ。
疲れれば効率は悪くなります。
効率が悪ければ、モチベーションは下がり、能力は上がりません。
達成感を得るためには、逆に短時間集中した方がいいんです。

朝、今日一日でこなす仕事量を見積もる。
やり終える時刻目標を設定する。
大まかに時間配分する。
あとはひたすらやる。
ひとつひとつやり遂げていく。

ほぼ目標を達成できたら嬉しいですよー。
達成感が持てます。
でも目標を達成できないときもあるかもしれません。
結果的に残業したっていいんです。
それによって自分の今の実力が分かります。
次からの目標設定をそれによって修正する。
達成できるようになったら、徐々に目標レベルを上げていく。
腕が上がったことが実感できるようになり、さらに嬉しくなります。
嬉しくなればもっと頑張ろうという気になります。
よい循環が生まれます。

仕事の効率が上がってくると、与えられた仕事を勤務時間内に終わらせることができるばかりじゃなく、もっと早く終わらせることができるようになります。
余った時間は自分のもの。
新たな仕事を見つけたり、今の仕事を改善したり、そういう新しい発展的な仕事をすることだってできます。
自分しかできない仕事、オンリーワンですね。
オンリーワンの仕事は楽しいですよ~。
短時間労働こそ、人を成長させ、人生を充実させるものなんだと思っています。
ぜひお試しを!


マニアの理科教師たちの研究団体である科教協全国大会が兵庫県で開催され、オプション企画でみなさんをCDBとスパコン施設へご案内しました。
ご自慢のスパコン空調設備を熱を入れて説明しちゃいました。
これもぼくのオンリーワンの仕事のひとつだと思っています。

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