2010年9月25日土曜日

歯車を回せ!

こんにちは

先日の電話交換機更新作業の立ち会い。
ぼくは監督員として1~2時間に一度くらいしか作業現場に行かない、と書きました。
じゃあ現場に行かない時間は何してるんだ?って思った人もいるかも。
別にサボっていたわけじゃなくて、普段やれない仕事をしていたんです。
ぼくは出張が多いため、なかなか和光研でしかできない仕事がやれない。
休日出勤も普段やれない仕事をするチャンスです。

ぼくは和光研次期スパコン計画にも参加しています。
次期の計画をするためには、今を知らなければなりません。
今のスパコンがどの程度電力を使っているかを調べたんです。
電気中央監視室には、各変電所の毎日の電気使用量が日報として残っています。
和光研にはたくさんの変電所があり、スパコンがつながっている部分のデータを探し出すのも一苦労。
分厚いファイルを1年分引っ張り出してきて、データを転記しました。
リンパックベンチマーク試験を実施した日とその時の電力も割り出しました。
データをまとめて、このプロジェクトのリーダーにメールで報告。
またひとつぼくの役割が果たせて気分爽快!

よく「社会の歯車にはなりたくない」とか「教育は歯車を作るためにあるんじゃない」なんて言う人がいますよね。
歯車ってそんなにくだらないものなのでしょうか。
エンジニアのぼくとしては納得できません。
そこでちょっと弁明しておきたいと思います。
歯車って何だ?ってことを説明しておきます。

歯車の役割は、

 パワーを伝達する

ということです。
モーターやエンジンで作り出されたパワーを、歯車を介して他の部分へと伝達するのです。
自動車はエンジンで作り出したパワーを、歯車を使って車輪に伝えて、動くことができるのです。

歯車はパワーを伝えるときに、そのまま伝えるのではなく、

 パワーを変化させる

こともできます。
大きい歯車に小さい歯車を接続すると、スピードを速くすることができます。
反対に小さい歯車に大きい歯車を接続すると、スピードを遅くすることができます。
また小さい歯車に大きい歯車を接続すると、トルク(回転しようとする力)を大きくできるのです。
乾電池で動くような小さなモーターのパワーでも、歯車を使ってトルクを大きくすれば、人を乗せた車だって動かすことができるようになるのです(遅いけど)。
特殊な形の歯車を使えば、回転方向を変えられますし、回転運動を上下動に変えることだってできます。

さらに歯車は、

 パワーを合成・分解できる

のです。
小さいエンジンがたくさんあって、それらのパワーを合成して強いパワーにしたいとき、歯車は役に立ちます。
大きな歯車の周りに小さな歯車をたくさん接続します。
小さな歯車には小さいエンジンが着いています。
小さいエンジンを同時に運転すれば、それぞれのエンジンのパワーは小さい歯車を介して大きな歯車に伝わります。
すると、大きい歯車を強いパワーで回転させることができるのです。

反対にひとつの大きなエンジンのパワーを、たくさんに分解して使うこともできます。
大きな歯車にエンジンを接続します。
大きな歯車の周りに小さな歯車をたくさん接続します。
エンジンを運転すれば、大きな歯車を介してたくさんの小さな歯車を回転させることができるのです。

このように、歯車はパワーの伝達、変化、合成・分解になくてはならないものなのです。
身の回りのものあらゆるものに歯車は使われています。
自動車、自転車、電車、自動ドア、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などなど。
歯車は世の中になくてはならない技術のひとつなのです。

ぼくはある意味人はみんな歯車だと思うし、歯車であるべきだと思っています。
歯車は回転を他の歯車に伝える役目をしているメカニズムです。
ただ単に伝えるだけじゃなく、速度を変えたり、力を増減したり、方向を変えたりしている。
ちゃんと役割を持って回転しているわけです。
人だって同じだと思います。
自分のした仕事をちゃんと誰かに伝えること、そうやって自分の役割を果たすことが生きる意味だと思うのです。
誰かの回す歯車からの回転を受け取って、自分の回転をうまくやり、その回転が他の誰かがちゃんと受け取ってくれる。
人との歯車がカチッとかみ合ったとき、とても気持ちがいいんです。

大内伸哉『雇用はなぜ壊れたのか』ちくま新書¥740-から引用します。

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多くの人は、会社の中で「チームプレー」をしている。
同僚とは切磋琢磨し、上司からは指導を受け、力を発揮するチャンスをもらう。
こうしたなかで、実力がついていくのである。
他者との関係性を度外視した実力などは、(よほどの天才ででもない限り)考えられない。
仕事をする上では、他者の力を借りながら、自分の実力を涵養していく努力をするということが大事なのである。
そして、そういう心構えをもてるということこそが、その人の本当の実力なのかもしれない。(110p)
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逆に言えば、ちゃんと誰かに伝わらなかったとき、自分の役割を果たすことができなかったとき、生きた実感がなくなる。
そういう気持ちになった人が「人間は歯車じゃない!!」って叫ぶんです。
自分が空回りした歯車になったとき、とてもむなしくなります。

悩んでいる人はたいてい歯車が空回りしているんです。
仕事は一人でやるものではありません。
一人でやってはいけないものだと思うのです。
一人で抱え込んではいけないんです。
悩んでいるなら、悩んでいることを明言するといい。
すると誰かが歯車をかみ合わせてくれます。
空回りから開放してくれる人が必ずいるんです。

誰かから仕事を受け取り、自分の役割を付け加え、それをまた誰かに渡す。
そのために自分という歯車を上手く回すんです。

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