2010年9月20日月曜日

IT化の罠

こんにちは

今朝のニュースで菅新内閣総務相片山氏が「公務員給与を人事院勧告以上に削減する」と言ったとか。
毎年ちょびちょび下げるくらいなら、いっそのこと今年一気にドカンと下げちゃってくださいよ!って思っちゃいますよ。
行動経済学の研究「プロスペクト理論」によれば、ちょびっと給料が下がるのが一番気分が悪くなり、人のやる気を奪うのです。
逆に、ほんの僅かでも給料が上がると、やる気が出るものなのです。
公務員だってほとんどの人は毎年努力を重ね、効率を上げ、成果も出していると思うんですよ。
なのに給料が下げられる。
それでやる気を出せという方が間違っています。
だからこの際完全にリセットする気でドカンと下げちゃって、そこから再スタートするのも悪くないとぼくは思います。

今年の人事院勧告はこんなのでした。
http://www.jinji.go.jp/kankoku/h22/h22_top.htm
人事院勧告は国家公務員の給料について、国に適正額を勧告するものです。
それは公務員は公僕であるため、労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)が制限されているためです。
本来、労働者は使用者と直接交渉することによって自らの賃金を決めていくものですが、公務員はその賃金を税金という公金で賄われるため交渉によって決めるのはそぐわない、という考えなんです。
その代わり人事院が民間企業(以前は職員数100人以上の会社でしたが、昨年から50人以上の会社を対象)の賃金を調査し、適正額を使用者である国に勧告するわけです。

我が社の職員は公務員ではありませんが、事業のほとんどが税金によって運営されているため、「見なし公務員」などと呼ばれており、労使交渉は行いますがほぼ人事院勧告を参照して決められるのです。
で、今年の勧告ですが、またもボーナスダウンです。
本給も中高年齢層はダウン。
ぼくの年俸も確実にダウンですね。
このところ毎年給料を下げるばかりの勧告なっていますが、最近の人事院勧告はその代わり労働条件を改善するための勧告もペアで行っています。
今年の勧告の場合、「65才定年制」もしています。
給料は下げるけど定年も伸ばしてやるから我慢してね、と言うことでしょうか。
デメリットを与えるならメリットも与えるってことです。
なぜこういうスタイルになったかというと、H20に「労働契約法」という法律ができたからです。
この法律に、一方的な労働条件の切り下げはしてはいけない、切り下げるならそれとバランスするものも提示しろ、と書いてあるのです。
そういうわけで、人事院勧告も給料だけの上げ下げだけではなく、他の労働条件についても勧告するようになったのです。

去年の人事院勧告は、ボーナスをドカンと0.35ヶ月減らせ、というものでした。
その代わり、ワークライフバランスに配慮した働き方ができるように「時間年休」の取得ができるようにしろ、とあったんです。
年次有給休暇は、労働者が心身を休めリフレッシュするために与えなければならないものなので、本来は1日単位で与えるものです。
が、それだとなかなか休めない人が多く、年休取得が進まない現状があるわけです。
そこで1時間単位の年休が取れるような制度にすれば、子育て世代なら保育園の送り迎えや、子どもが急病の時の対応もしやすくなります。

去年ぼくは労組委員長でしたから、ボーナスを減らすのは我が社の置かれている状況や世情から考えて容認せざるを得ないが、合わせて勧告通り時間年休も実現するよう要求しました。
が、これがすぐにはできないって言うわけですよ、会社側は。
なぜなら我が社の勤怠管理はIT化しており、このソフトウェアの変更に時間とお金がかかると言うのです。
おいおい、そんなに大変なソフトウェアかー、って思っちゃいましたよ。
ぼくは簡単なプログラミング程度ならできる知識や技術を持っています。
すぐさまぼくの頭の中には時間年休を管理するためのプログラムが思い浮かびました。
すぐできない、ソフトウェアの変更に時間とお金がかかるのは、そのソフトウェアを外注しているからです。
外注していると、ちょっとした変更をするにもとんでもないお金と時間を要求されちゃうのです。

吉越浩一郎『CEO仕事術』朝日新聞出版¥1400-にこうありました。

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マニュアル化の一つであるITシステムは、常に更新可能な状態にしておくのが望ましい。
社内のマニュアルが充実し、より高度な仕組みで仕事が回るようになると、一度作り上げたITシステムに、すぐ現状にそぐわない不都合な部分が出てくるものだ。
ところが多くの会社が、そこで立ち往生しているのが現状だ。
なぜならITシステムは外注することが多く、簡単に修正できないからだ。
ちょっとした修正を依頼するだけで、システム会社に何千万円の費用を支払うことになる。
だから、少々、使い勝手が悪くなっても、そのまま我慢して使い続けるのだ。効率化のために導入したITシステムが、効率化の妨げとなるという笑えない事態である。(160p)
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IT化すると、確かに業務効率が上がります。
ルーチンワークをすべてコンピュータがやってくれるわけですからね。
ただし、そのソフトウェアが実情とぴったり合っている場合はね。
実情とのズレが大きくなるにつれ、反って業務効率を下げていきます。
だから常に実情の業務に合わせて、ソフトウェアをカスタマイズし続ける必要があるんです。
そうじゃないとIT化しても効率は上がりません。
だから、IT化すればすべてオッケーと単純に考えているバカ経営者はダメなんですよ。

まあ確かに「バグのないソフトはない」と言われるように、安定して確実な動作をするソフトを作るには大変な時間と労力がかかります。
それはそのまま金額に跳ね返ってきます。
だから会社としてはカスタマイズすることに躊躇してしまうのです。
そして、間尺に合わなくなったシステムを使い続け、業務効率を下げていくわけです。
これじゃあ何のためにIT化したのか、分からなくなります。

吉越さんの会社、トリンプでは、社内システムは社内で作るようにしていたそうです。
だから実情に合わせて、迅速に、ON Timeでソフトをカスタマイズできた。
その代わり、多少のバグは容認していたんだと思います。
バグがあっても、すぐ社内担当者が是正できるから、それほど問題にならないわけです。
だからこそIT化の威力も発揮され、経費削減、労働時間の短縮につながり、毎年増収増益を続けられたと言うわけです。

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