2011年1月30日日曜日

熱い蒸気で冷たい水を作る1


こんにちは

先週末は神戸スパコン施設に建設していたコジェネレーション発電設備の完成検査。
2台の合計出力1万kWのれっきとした火力発電所です。
今回選定したシステムは、スパコンを安定的に稼働させるためわざわざ最新鋭のものは避けました。
稼働実績が豊富であり、既にシステムとしてのトラブルが解決されている機種。
世界で100台以上が稼働中であるものにしました。
最新鋭のものはやっぱりトラブルも多く、安定運転するまで時間もかかります。
目的はスパコン世界一。そのためのインフラ設備です。
こなれた設備の方がいいんです。
一世代旧型の設備だと言っても、これまでに改良が加えられており効率もよくなってきている。
その上、最新鋭の機種より安価ですしね。一挙両得なんです。

検査のはじめに我が部長に「この施設は関口君が中心になって作ったんです」と言ってもらえたので、ぼくは担当理事に張り付いて解説。
完成検査時も、運転員の教育訓練のために発電していました。
ちょうど1号機から2号機への切り替え中で、かっこいいところも偉い方々にご覧いただけました。
こうして無事、完成検査も終了。
工期ほぼ2年間にわたって努力してくれた、スタッフの皆さんに感謝ですね。

コ・ジェネレーションの名の通り、二つのエネルギーを発生させます。
一つは当然ながら電力、もう一つは熱です。
燃料を燃やして発電用タービンを回転させます。
タービンエンジンから排気が出ますが、その排気は600℃もの温度を持っています。
これを排気として大気に捨ててしまってはもったいない。
まだまだ活用できる高い温度ですから、これを利用します。
タービンエンジンからの排気をボイラーに導き、お湯を沸騰させ、蒸気を作るんです。

エンジンなど熱機関は「エネルギー効率」でその性能を測ります。
もともとの燃料が持っているエネルギーを使って、どれだけの出力エネルギーに変換することができるか。
たとえば、自動車に使われているガソリンエンジンのエネルギー効率は15%くらいしかありません。
ガソリンの持つエネルギーのうち、15%しか自動車を動かす出力になっていないのです。
電力会社の火力発電所はどうでしょうか。
最新鋭の火力発電所でも59%、火力発電所平均で48%に留まります。
それに比べて我がコジェネレーション設備は最大80%近くの効率です。
すごいでしょー。
なぜこんなに効率が高いかと言えば、エンジン排気の熱を回収するからです。

電気は電線で遠くまで運べますが、熱を遠くまで運ぶのはとても難しい。
太いパイプを延々と張り巡らせるにはお金がかかりますし、熱を運んでいるうちにどんどん放熱してしまい、ロスが大きいのです。
だから電力会社の火力発電所は、もったいないけど排気を大気へ捨ててしまっているんです。
我がスパコン施設はすぐ隣にスパコンがいます。
スパコンを冷やすために、排気から回収した熱で作った蒸気を使うんです。
だからエネルギー効率を高くできるのです。
エネルギー効率が高いということは、使う燃料も節約でき、CO2の発生も少なくてすむということでもある。
ぼくはCO2地球温暖化説は信じてはいませんが、近い将来に予定されているCO2排出権取引のときも有利になるかもしれません。

ところで、タービンエンジンから排気される熱を回収して蒸気を作り、スパコンを冷やすための冷水を作る、と書きました。
蒸気は当然ながら100℃以上、冷水は10℃以下の冷たい水。
熱い蒸気で温水を作るなら誰でも分かると思いますが、なぜ熱い蒸気で冷たい水が作れるのか、不思議に思う方もいるかもしれません。
実は、このコジェネレーション設備の予算をいただくときに、ぼくも文部科学省の担当部署におじゃまして説明したんですよ。
役所の方も、なぜ蒸気で冷水が作れるのか疑問に思っていたそうなんです。
ぼくの説明を聞いて「おー、なるほどねー。すごくよく分かりました」って言ってくれました。
おかげで、予算も付けてくれたってわけです。

次回、蒸気で冷水を作る仕組みについて書いてみたいと思います。
お楽しみに!


写真はそのコジェネレーション設備。
狭い場所にデカイものを設置したんで、その全容を撮影することができません。。。

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