2011年4月25日月曜日

楽しいから勉強してしまう


こんにちは

昨日は大阪科学技術館でサイエンスカフェ。
連日の講演となりましたが、好きなことをやってるのでまるで疲れません。
昨日もたくさんの人が集まってくれました。
ぼくのサイエンスカフェでは、冒頭に「今日ぼくは何をしに来たんでしょうか?」と問いかけることにしています。
で、「未来の科学者を探しに来た!」って言うんです。
もともとサイエンスカフェに来るような子は理科マニア。
眼がキラキラ輝きますよ。
ついでに、「ご一緒のお父さん、お母さん、ごめんなさい。ちょっと手遅れです」と言ったりして、笑いを取ります。
つかみはおっけーってことで。
XFELの話をしながら、最後は「好きなことをとことんやろう!」という結論に導きます。
そう言っているぼくが好きなことをとことんやっていなければ、迫力も出ませんよね。
子どもたちにそう言う事によって、ぼく自身も好きなことを優先的にこれからもとことんやっていこう、という気持ちを新たにするわけです。

先日、JAXAの川口淳一郎さんの講演を聞く機会がありました。
小惑星イトカワから世界初のサンプルリターンを成功させた、はやぶさチームのリーダーですね。
川口さんはJAXAの中の宇宙科学研究所(ISAS)の所属。
ISASはもともとは東大宇宙航空研究所でした。
宇宙航空研究所は日本のロケット技術の父、糸川英夫博士が始めた研究所なんです。
糸川博士は戦時中は戦闘機の開発者だった。
糸川博士が設計した戦闘機が、ゼロ戦とともに旧日本軍の主力戦闘機であった「隼(はやぶさ)」なんです。
そして小惑星イトカワは、もちろん糸川博士にちなんで名付けられたもの。
ですから、はやぶさプロジェクトは糸川博士へのオマージュでもあるんですね。

川口さんのお話で面白かったのは、

 はやぶさに使った技術の重要なところは論文にしない

ということです。
だって、真似されちゃいますから、だそうです。
アメリカのNASAは日本の宇宙開発の10倍もの予算を持ち、10倍もの研究者や技術者を擁しています。
論文にしてしまったら、即真似されてしまいます。
それでは日本が勝てるわけがありませんからね。

論文にしない、すなわち川口さんたちのチームは科学者ではない、ということです。
自分たちの技術、ノウハウを守り、独自性を保つ。
それは「技術者」に他なりません。
はやぶさチームはエンジニア集団なんですよ。
糸川博士も戦闘機の設計者ですから、もちろんエンジニアだったわけです。
その伝統が今も連綿と続いているんです。
川口さんも工学博士ですしね。

だから本音を言えば、ぼくの推測ですが、はやぶさチームの目的は「リターン」の方なんでしょう。
小惑星からサンプルを持ってきて、宇宙や地球の起源を調べる、という方は重要ではない。
予算を取るためのひとつの方便だったかもしれませんね。
ロケットを宇宙に飛ばし、ある星に到達させ、そこに着陸させ、サンプルを採取し、再び地球へと戻ってくる。
それがやりたかったんだと思います。
やりたいことに熱中する。
はやぶさチームのそんな情熱が、川口さんの講演から伝わってきました。

糸川博士がパリ工科大学で講義したときの内容がネットで見つかりました。
http://www.romresu.net/itokawa.html
糸川博士が若い時、どんな勉強法をしていたかが分かりました。

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自分は勉強をしているという意識などなくて、どちらかというと偏執狂で、興
味にかられて文字通りしらみつぶしに問題を解いていただけなのだけれど、結果として大変な量の勉強をしていたようだ。
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偏執狂=マニアです。
マニアは勉強しているという意識がないんです。
面白いからどんどんやってしまう。
やらないと気が済まない。
問題が解けたり理解が進むと楽しくなります。
さらに勉強したくなる。
それで結果としてたくさん勉強してしまうんです。

勉強ができるようになる一番のコツは、大量にたくさん勉強するってことです。
勉強できない子はアタマが悪いのではありません。
そもそも勉強してないんです。
ぼくの教師経験でもそれは間違いないと思います。

糸川博士は東大教授としてロケットの研究をしていました。
が、志半ばで定年前に退官してしまいます。
その一つの原因は朝日新聞での猛烈なバッシングだったそうです。
糸川博士の中学校から大学までの同級生が、当時朝日新聞の科学部長をしていました。
この人が糸川憎しの急先鋒だったそうなんです。
糸川博士は、こう言います。

 彼だって一中、一高、東大出の秀才なんだ。
 だけどたまたま私と同級生だったばかりに
 どうしても一番になれなかったのだ。
 彼は気の毒だけども、勉強だと思ってやるから、
 私の勉強量に追いつくのは大変だったのだ、
 ということを後年こうして気がつかされたのだ。

要するに、嫉妬、妬みだったんでしょうね。
バッシングは受けたけれど、糸川博士は東大退官後も大活躍します。
糸川博士のお弟子さんたちもその精神を連綿と受け継いて、それがはやぶさプロジェクトの成功へとつながっています。
やっぱりマニアのほうがハッピーになれるんだって、ぼくは思うんですよ。
マニアバンザイ、変人バンザイ!

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