2011年6月29日水曜日

「想定外」の工学的意味


こんにちは

ある雑誌を読んでいたら、こんなことが書いてありました。

   最近、「想定外」という言葉をよく耳にしますが、
   厳しい言い方をすれば、
   想定しないこと自体が問題ですし、
   単なる言い訳でしかありません。

たぶん福島第一原発事故のことを批判しているんだと思います。
同様な批判をよく聞きます。
確かにこの事故について、東京電力のエンジニアたちも「想定外」と言いました。
でもちょっと違うんですよねー。
「想定外」の意味を取り違えている。
というより、ぼくらエンジニアの言う「想定外」の意味が多くの人に伝わっていないように思うのです。

福島第一を造ったエンジニアたちだって、大地震や高い津波を全く想定していなかったわけじゃないと思うんですよ。
ちゃんと考えたに違いないんです。
エンジニアリングとは、技術、コスト、時間に縛られているのです。
その時代時代によって、技術レベルは異なります。
一般的に言えば、昔であればあるほど低い技術力しか持っていないのは当然です。
そしてその時に使えるコストも有限です。
また、完成までの期限も決まっている。
そういう境界条件に縛られた中で、最適解をチョイスすること。
それがエンジニアリングなのです。

ですから、今までに経験したことのない大地震に対しても検討はしているのです。
理想的には大地震にも対応した施設としたいのは、エンジニアだって同じ。
でも、その地震に耐えられるだけの技術がないなら、やれないのです。
あるいは、それに対応するためにはとんでもないコストと時間がかかるとしたら、やっぱりできないのです。
そういう切り分けをしないとならないわけです。
工学とはその意味で「妥協」なんです。

いろいろな束縛条件、境界条件の中で、どこまで対応できるのか、どこからは無理なのかを明確に切り分ける。
明確に切り分けられる能力があることが、一流のエンジニアなんです。
それで、対応できない、無理だと判断したエリアを、エンジニアは「想定外」と言うのです。

川口淳一郎『「はやぶさ」式思考法』飛鳥新社¥1300-にこうありました。

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技術者は、自分がどこまで把握しているか、自信があるか、それはよくわかって いるものです。
できることとできないこと、わかっていることとわからないこと。
その境界線をはっきり意識しています。
それ故に、境界線を超えてしまった ことについては、明確に「わからない」「自分にはどうしようもない」と認識しています。(178p)
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確かに福島については、想定が甘かったと言えます。
運開して40年、その間に技術レベルもあがってきて、「想定」できる範囲も広がったはずです。
改造工事もできた思います。
そのためのコストも用意できたのかもしれません。
あるいは、既に設計寿命が尽きていたのですから、停止、廃炉する判断もできたかもしれません。

それでもいつの時代になっても、技術、コスト、時間に縛られているのがエンジニアの宿命なのです。
明確な締切りがあるのなら、それに合わせて改造だってできるのです。
実際に改造計画はあったし、予算待ちだったようです。
でも地震など天変地異はいつ、どんな規模で起こるのか分かりません。
間に合うかどうかは、神のみぞ知る、なのです。

後知恵で、想定していなかったのはけしからん、と言うのは簡単です。
でもそれは無責任な言動でもあるとぼくには思えます。
無責任に批判しても問題は解決しないのです。
批判すれば解決するものでは絶対にない。
解決できるのは現場のエンジニアでしかないのです。
だから、励まして欲しいし、ぼくは現場のエンジニアたちを応援しています。
外野にいる者ができることはそれしかないと思います。

2011年6月26日日曜日

腹八分の免疫学


こんにちは

5月の半ばくらいから、ぼくの持病のアトピー性皮膚炎が悪化し始めました。
ストレスです。
ちょうどその頃、スパコンのベンチマーク試験が始まったのです。
スパコンランキングtop500への登録締め切りが間近でした。
ここでコケたら大変です。

特にぼくは、スパコンを動かすための電源やら冷却やらインフラ設備を、最初から造ってきた人間です。
そして今はそれらインフラ設備を運転する責任者でもある。
インフラ設備の不具合で、世界一を逃したとしたら、極悪人になっちまいます。
加えて4月から始めた単身赴任のストレス。
体が真っ赤に腫れ上がり、ひどいかゆみに悩まされました。

こういうときは、断食が効きます。
アトピーも消化力が十分でないために起こるものだからです。
免疫力は、一度かかった病気に二度とかからないようになる力とか、自分と他者を区別する働きとか、いろいろな側面がありますが、一言でいえば「消化力」なんです。
食べ物の消化力もそうですし、体内の毒物、異物の消化力も、同じ免疫力の働きなんです。

アトピーは体内の毒物、異物の消化力が不十分なために起こります。
だから、消化力を体内の毒物、異物の消化に専念させてやればよい。
そのために、食べ物の消化を休ませるのです。
食べ物の消化をしなくてよい分、体内の消化力に注力できるのです。
だから断食すると、アトピーを軽快させることができるのです。
ぼくも二日間、野菜ジュースだけにして、固形物を食べるのを止めました。
それで激しいかゆみは軽減し、発疹も薄くなりました。

が、よく考えたら原因はストレスとは違うところにあったみたい。
単身赴任して一人暮らしになって、食べる量がそれまでと狂ってしまったんです。
毎晩、お米2合炊いて食べていたのです。
どんぶり大盛り2杯分ですね。
そのご飯をたべるために、おかずも2人前買って食べていたんです。
食べ終わると、動けなくなって布団にごろん。
育ち盛りの中高生、肉体労働者じゃあるまいし、こりゃー、明らかに食べ過ぎです。
それを2ヶ月近く続けていたんです。

食べ過ぎていたために、胃腸が疲れてしまったんですね。
食べ物の消化にばかり、体の消化力が消費されてしまった。
だから、体内の消化力が不足し、アトピーを発症させてしまったんです。
ぼくは元もとあまり体力がある方ではありません。
確かにアトピーも悪化しましたし、疲れも強く感じていました。
すべての体力を、食い過ぎによって使い果たしてしまったんです。
反省しました。

考えてみると、スパコンのインフラはストレスになるようなことは全くなく、まずまず順調に運転されていました。
神戸でのスタッフにも恵まれ、上司も(変人だけど^^;)いい人で、和光にいたときよりずっと仕事上のストレスは減っていたんです。
まあ家族と離れて暮らすのは、多少ストレスだったかもしれませんがね。

免疫力とは消化力なんです。
食い過ぎて、消化力を疲弊させてはいけなかったんです。
食べ物の消化力をほどほどにすることによって、体内の消化力に余力を残す。
昔から「腹八分」というのは、こういう意味だったんですね。

以来、ご飯は1合だけにしました。
おかずも少なめにしました。
アトピーも軽くなり、体調もよくなった。
元気も復活してきました。
おまけに食費もかからなくなりました。
いいことずくめ!

2011年6月23日木曜日

元気の作り方


こんにちは

教え子からこんなメールが届きました。

  関口先生へ
  こんにちは。 忙しい所すみません。
  今日北海道新聞で、 スバコン京が 世界一になった という記事をみて、先
  生がメールで教えてくれたのは、この事だとしりました。
  携帯で、その後で検索したら、先生が(はやぶさ)で持ち帰った資料を分析
  する施設を作った事もしって、凄すぎてびっくりしました!
  おめでとうございます!
  私も、あきらめない生き方しようと思いました。

嬉しいですねー。
元気が出ますよ。
教え子も何か「あきらめかけていた」んでしょうか。
ぼくがやってきたこと、やっていることを知って、あきらめない勇気が出たのかもね。
よかった、よかった。

そしてスパコン世界一が多くの人たちに勇気を与えたとしたら、こんな嬉しいことはありません。
嫌なこと、大変だったこともすっかり忘れちゃいましたよー。
あはははは。

振り返ってみれば、ぼくはすごくいいポジションにいました。
スパコンプロジェクトが発足して翌月には兼務発令。
コンピュータの概念設計と並行して、建物、インフラ設備を検討してきました。
だから、コンピュータの設計打ち合わせにも参加することができました。
門外漢ですからわからない事だらけでしたが、それはそれ。
門前の小僧の気分になって、話を聞いていました。
もちろん、少しでも理解するために本も買いましたよ。
基礎が足らないので、読破というほどには至りませんでしたが、概略は理解したつもり。
いやそれもおこがましいか。
理解しようと努めた、ってとこでしょうか。
そして理解したことをもとに、建物、インフラ設備の設計をし、マシンの開発状況に合わせ設計も見直し、施工を監督してきたわけです。
そして4月からは神戸で直接施設を運用する立場になれた。
リンパックベンチマーク試験を実施しているその場でにいられたんです。
世界一のために、それを支えるインフラ設備を最初からずっと関わってこれた。
完璧とは言えませんが、少なくともコンピュータの稼働に支障のない程度にはインフラを動かすことができ、貢献もできた。
エンジニアとしてこんなにハッピーなことはありませんよ。
ありがたいことだと思います。

下川浩二『人生は、マネしてトクして楽しもう。』サンマーク出版¥1300-に「人からもらった元気は、人に消される」と書いてありました。

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人とあって話をして元気になったとしても、日常の職場に戻ったり家に帰ったりしたら、身近な人から否定されて、また元気を失ってしまうことがあるからです。
本当に元気でいるためには、人から元気をもらうのではなく、まずは、周囲の人
を元気にしてあげることから始める。
元気を入れるのが先ではなく、元気を出すことを先にするのです。(51p)
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なるほど、なるほど。
時に人から元気をもらうこともあっていいと思いますが、それだけじゃダメなんですね。
自分が誰かを元気にしてあげる。
それが逆に自分を元気にするんです。

ぼくは、人の行いの中で一番尊いことは、

 誰かをエンカレッジし、エナジャイズすること

だと思っています。
変なカタカナ語を使うなよ。
要するに、勇気付け、元気にさせる、ってことですね。
こういう人が一番偉い。

でも世の中には、人の自信を失わせ、元気を奪う人もたくさんいる。
人間のクズだと思います。
意外と組織の長に、まあ中間的なコワッパにそういう人がいます。
人はご機嫌なときに最大のパフォーマンスを発揮するのです。
他人の自信を失わせ、元気を奪って何をしたいというのでしょうか。
それはただ単に自分のちっぽけなプライドを守るためだけなんですよ。
不機嫌な組織ではろくな仕事はできません。
自ら率いている組織がそうであれば、それは自らの首をしめているだけなのにね。

大きな仕事を成し遂げる人は、あまり他人を馬鹿にしたりしませんよ。
もちろん、必要なら叱ったりもしますが、自分のプライドのためじゃなく、その人のために叱る。
だからその人の周りの人たちはご機嫌になって、パフォーマンスが上がる。
当然、大きな仕事も成し遂げられるわけです。

下川さんはこうも言います。

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自分の周りの友人を喜ばせたり、励ましたりして、その人を元気にしてあげる。
すると、その人から「ありがとう」と言われ感謝される。
人は「ありがとう」と言われるとうれしい。
人は、うれしさを感じると元気になる。
人を元気にすることができたら、自分も知らず知らずのうちに元気になっている・・・そういう構造です。(51p)
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そう、これが本当の元気の作り方なんです。
誰かを喜ばせたり、励ましたりする。
その人から「ありがとう」と言ってもらう。
それが自分を元気にしていくんです。

さらに人間には「ありがとう保存の法則」が働いています。

ありがとうをもらえない人は、自分の中のありがとうが枯渇しています。
だから誰かにありがとうと言えない。
たとえ何かいいことをしてもらっても、ありがとうと素直に言えないんです。
そういう人は皆から疎まれ孤立していく。

逆に、ありがとうをたくさんもらった人は、そのありがとうを他の人に与えられるんです。
なんたって、自分の中にありがとうがたっぷりあるからね。
誰かのちょっとしたいい行いにも、ありがとうって言える。
と言うより、ありがとうをたくさん持っている人は、誰かのちょっとした良い行いにすぐ気づくことができるんですね。
だから、すぐありがとうと言える。
ありがとうがその人を元気にする。
そしてまた自分も元気になるんです。

2011年6月21日火曜日

楽しい時が本当の自分


こんにちは

やりましたー。
ぶっちぎりのNo.1でしたー。
何ってスパコンですよ。
次世代スパコン「京速コンピュータ”京”」が世界一をGetしたんです!
http://www.top500.org/list/2011/06/100

ぼくはこのプロジェクトの最初の段階から参加させてもらっていました。
ぼくの担当は建物や電源、冷却設備など、コンピュータにとってのインフラです。
かれこれ5年ですからね。
ぼくの造ってきた設備類は、例によって完璧とは言えませんが、なんとか役割を果たしてくれました。
とっても嬉しいです。
これまで一緒にやってくれた設計、施工、運用スタッフのみなさんにも感謝ですね。

このプロジェクト、事業仕分けなんてこともあってすべてが順調とは言えませんでした。
大プロジェクトに関わると、身近な人達からもあれこれ言われますしね。
苦労がなかったとは言えません。
でも、そんなに大変でもなかったと思っています。
とにかく楽しかったんですよ。
わくわくの連続なんです。

森博嗣『自分探しと楽しさについて』集英社新書¥700-にこうありました。

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「楽しさ」を探す行為というのは、第1章で述べた「自分」を探す行為と、ほとんど同義であるように感じる。
おそらく、両者の違いは実質的にほとんどないと言っても良い。
というのも、誰でもが思い描くあるべき「自分」というのは、普通は「楽しい自分」なのである。
悲しいヒロインになりたい、といったやや屈折した願望は例外として、ほとんどの人は、楽しい状態を望んでいる。というよりも、そういう望ましい状態を「楽しい」というのだ。
「悲しいヒロイン」になりたいと願っている人にとっては、つまりそれが「楽しみ」なのである。(55p)
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そう、ぼくもスパコンプロジェクトとXFELプロジェクトを通して、自分は「エンジニアなんだ」とわかった気がするんです。
うまくやるために熱中する。
熱中するとうまくいく。
うまくいくとご機嫌になる。
ご機嫌になれば自分の腕が上がる。
腕が上がると自分が何に向いていたのかがわかる。
自然と、エンジニアの王道を歩いてこれたように思えるんです。
まあ、ちょっとおこがましいかな。
あはははは。

森さんの言うように、楽しいことをやっているのが自分、というのは正しいことだと思います。
若者が「自分探し」をしてしまうのは、楽しいことをしていないからなんですね。
楽しくないから、自分がここにいる理由がわからない。
どこか他の場所に自分のいるべき楽しい場所があるんだという幻想を持ってしまう。

でも楽しいことは待っていてもやってこないんですよ。
自分が動いてみないと、好きなことは見つからない。
森さんはこうも言います。

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一般的にいえる傾向として、自分に向かって近づいてくるものは、えてして楽しくないものが多い。
これに対して、自分が向かっていきたいものは、たいていは楽しいものである。(55p)
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スパコンプロジェクトに誘ってもらえたのも、ぼく自身が面白そうと思っていたからなんです。
プロジェクトが始まる前から、技術士会の見学会やら電気設備学会の見学会などで、地球シミュレータセンターやいろいろなデータセンタに通いつめた。
いろんなチャンスを見つけて、好奇心を発揮していたんです。
もちろん書籍も読んだりして、ここはこうするといい、こうしたほうがいい、みたいなことを勝手に考えていたんですよ。

はっきり言って、やるかどうかわからない仕事のために、年休使って見に行ったり、お金を払って本を買ったり、時間を使ってあれこれ考えたりするのは不合理です。
でも楽しんだから。

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楽しいものは、「やらなければならないもの」ではない。やってもやらなくても、どちらでも良いものだ。(56p)
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そうそう、楽しいことはやらなければならないものじゃないんです。
やってもやらなくともいい、でもやればたのしいこと、なんです。
いやいや、やれば楽しいことがやってくること、なんです。
楽しいことをやっていれば、能力が発揮されます。
能力があれば、お誘いも来ます。
誘われれば、そこに自分の居場所が見つかります。
自分の居場所がしっかりあれば、心も安定します。
ますます楽しくご機嫌になります。
ご機嫌なら体調もよくなり、健康に元気でいられます。
ご機嫌こそ、能力の源泉ですからねー。

2011年6月19日日曜日

北海シマエビが美味い!


こんにちは!

今年もそろそろ、オホーツクの初夏の味覚「北海シマエビ」漁がはじまる季節になりました。
オホーツク海沿岸の汽水域で捕れるエビで、春(と言っても北海道の春ですから初夏)と秋の年2回しか漁のない貴重なエビです。
捕れたてシマエビを浜茹でして、冷凍で送ってくれます。

1kgで家族4~5人でたっぷり食べられますよ!
冷蔵庫の中で1日ほど自然解凍して、殻をむしって食べるだけ!

冷凍のままなら一月ほど保ちます。
一度に食べるには多すぎるようだったら、必要なだけ解凍して、
残りは冷凍のまま保存するのもいいです。

北海シマエビ(冷凍)
 (L)\5,000/kg
 (M)\4,200/kg  送料・箱代別
   金額は例年値です。詳しくは問い合わせてください。

問い合わせ先
 のつけ(堀さん)
  tel.fax.01537-2-0641

春エビは(M)サイズがオススメです。
小さめですが身が締まっています。
漁は7月半ばまで。
年に一度の春エビ、ぜひどうぞ!

2011年6月18日土曜日

放課後居残り勉強


こんにちは

溌貴君のクラスでは、放課後居残り勉強をしてくれています。
希望者だけ30分くらい教室に残って、先生に勉強を見てもらえるんです。
溌貴君も自分から希望して勉強してきます。
6時間授業の日も行われるので、溌貴君の帰宅は5時半くらいになります。
帰ってくるとお腹ぺこぺこ。
ご飯食べて宿題やってお風呂入ってバタンキュー。
いいですねー。

放課後学習では、だいたい毎日算数を中心に10枚くらいのプリント学習をしてきます。
だいたいクラスの1/3くらい、10名前後の子どもが残って先生と勉強しているそうです。
なぜこういう居残り勉強をしてくれているのか。
先生ははっきりとおっしゃいませんが、ぼくは以下のように推測しています。

小学生といえども授業の中だけで、完全習得させるのは難しいです。
個別指導も必要となるんです。
特にこの学年で習得しないと後々困るようなものは、しっかり教えないといけない。
放課後に残して個別指導してあげないと、後々子どもも困るわけです。
でもそういうとき、その子だけ残すのはまずい。
自分は頭が悪いのではないかと思いこみ、よけいに習得を困難にする。
放課後残して勉強させることは、子どもの心を傷つけるリスクもあるんです。
そういう事態は避けなくちゃね。

その時、普段から放課後の居残り勉強を行っていれば、「○○君、今日は一緒に放課後勉強していこうか」と違和感なく誘えます。
もちろん元もと残っている子なら、まったく違和感なく放課後の個別指導ができるのです。
そうやってしっかりした学力を、落ちこぼしなく身に着けさせる。
先生はこういう戦略なんじゃないかって、ぼくは思っています。
スバラシイですねー。

2011年6月16日木曜日

段取りがいいと人柄もよくなる


こんにちは

「お、よかったー!」
出勤してメールチェックをすると、電気設備学会事務局からの催促のメールが。
夏の大会の発表論文をまだ提出していなかったんです。
発表の申し込みとアブストラクトの登録はしてありましたが、論文は書けていなかった。
締切りは先週末。
先週末は学会賞授賞式があったり、次男のお受験する学校へ見学に行ったり、ちょいと忙しかったわけです。
論文を書く気力が残っていなかった。
なので今年は発表を諦めていたんです。
ところが学会事務局からのメールには、「21日まで投稿を受け付ける、それ以降は絶対受け付けない」と書いてありました。
間に合うぞ、ラッキー!

書くネタは揃っていたので、あとはそれをA4×2枚にまとめるだけです。
通常業務の合間にザクザクと書いていきました。
ぼくは拙速主義ですから、完成度よりもとにかく書き上げてしまうことを目標にする。
多少の論旨のちぐはぐ、てにをはの間違いなど気にしないんです。

ぼくの論文の書き方はこうです。
A4×2枚なら、4つくらいのトピックしか書けません。
キーワードを4つ設定して、それをひとつの節にして書いていきます。
ある節を書いていてちょっと詰まってしまったら、別の節を書く。あるいは、通常業務をします。まあ気分転換ですね。
別の節を書いているうちに、あるいは通常業務をしていると、もとの節の話をどう展開していけばいいか思いついたりするんです。
そうしたらもとの節に戻って書きつなげる。
だいたいそれぞれの節の文字量が適切になったら、論がうまく流れるように節の並べかえをする。
これで完成。

勤務時間内に書き上げて、即投稿しました。
これで今年の大会論文集にも載せてもらえます。
学会事務局さん、ありがとー。
気分良し!

どこの職場にも「忙しい、忙しい」と言っている人がいますよね。
または、忙しそうに机にかじりついてパソコンをにらんだり。
あまり同僚とおしゃべりしたりしない。同僚たちと目を合わせようとしない。
下を向いて、黙りこくって、暗い顔で黙々と仕事をしているような態度を見せる。
ついでに、ちょっと具合悪そうにマスクなんかしちゃったりしてね。

その実、その人のアウトプットはそれほどでもないんです。
そういう人って、自分の周りにバリアを張っているだけなんですよね。
自分の殻に閉じこもっている。
オレは忙しいんだから、これ以上仕事を増やすな、ということを態度で示しているんでしょう。

だからぼくは、忙しぶっている人を評価しませんよ。
だって仕事は忙しいに決まっているじゃないですか。
忙しくない仕事に誰も給料を払ってくれませんよ。
忙しい中でどう自分の仕事をマネジメントしていくか。
それが大切だと思っているからです。
越川禮子『三六九の子育て力』ポプラ社¥1300-にこうありました。

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忙という文字は「心を亡くす」と書きます。
心を大切にした江戸っ子は、「忙しい」と言われるのを大変、嫌がりました。
他人に「忙しそうですね」「お忙しいでしょう」と言われると、顔色を変えて怒ったそうです。
自分のことを「忙しい」というのは、本来は「心を亡くして木偶の坊になりました」という卑下した言い方です。
###

ぼくは偏屈者だから、「お忙しいですか」とか「お忙しいところすみません」とか言われると、忙しくないよ、ひまひまー、なんて言ったりする。
だってオレは木偶の坊じゃないんだから。
とにかく段取りよくやって、一つ一つ片付けていく。
朝出勤したら、今日やることを紙に書き出して、一つずつやっつけていく。
定時退勤目指してザクザク進めるだけです。
そうやって少しでも余裕を作るんです。
段取りがよければ、仕事は意外と早く片付きます。
早く片付けば、ご機嫌になりますよね。

筒井康隆『笑犬楼の知恵』金の星社\1000-にはこう書いてありました。

###」
仕事中に話しかけられると怒る人がいるけど、あれは段取りがへたで、いつも
せっぱ詰まっている人に多いんです(笑)。
段取りができていれば笑って対応できる。
こういう人はあながち愛想がいいから評判がいいんじゃなく、仕事ができるから評判がいいんです。(108-111p)
###

なるほどー。
人柄がいいって、ただ愛想がいいだけじゃないんですね。
段取りが良くて、腕も確かで、余裕もある。
だからいつもニコニコ、ご機嫌でいられる。
誰かから話しかけられたり、相談されたり、新たな仕事を頼まれても、余裕があるからそれに対応できる。
人柄は実力の証でもあるんですね。

2011年6月15日水曜日

合格点をたたき出せ


こんにちは

昨日はSPring8で仕事でした。
5月末にXFEL実験棟の完成後1年目の検査をしました。
その時に、この建物の講堂に設置した300インチ大画面プロジェクターの不具合が見つかりました。
投影した画像が5mmほど上下に揺れるんです。
人間の目の分解能は高性能です。
10m程度離れた客席から見ても、その揺れが分る。
この不具合を直しに行ったんです。

スクリーンは揺れていないので、プロジェクタ側が揺れている。
この揺れを抑えればいい。
プロジェクタは天井から吊ってあるので、先ずはここを補強してみようということになりました。
天井が高いため吊り材も長く、それが揺れの原因だろうと推定しました。

こういう時にラジカル=根源的な解決法を求める人がいます。
プロジェクタをメーカーに持ち帰り調査しろ、とかね。
ぼくはそういうの、嫌いなんだなー。
もちろんメーカーの工場に持ち帰ってしっかり調査しなくちゃいけない時もありますよ。
でも、最初は現場でできる処置をしてみるのが正しいと思うのです。
現場であれこれ工夫してみる。
それで是正できたなら万々歳だし、是正できなかったとき初めて、取り外してメーカーに調査依頼すればいいと思うのです。

最初からメーカーに持ち帰れ、という人は、たいてい自分では何もやらない人。
自分でやれることをやらないで、他人にやらせることしか考えない人が、あんがいラジカルな方法を選択するんです。
まあ自分であれこれやるだけの技術力もないってことなんでしょう。

プロジェクタを持ち帰ってしまったら、その間大講堂が使えなくなってしまいます。
代替機を持ってくるとしても、取り外し、最取り付け、配線替えなど手間暇も増えます。
そもそもこれだけの大画面を投影するプロジェクタの代替え品を簡単に用意するのも難しいはずです。
こんなことをやっていたら、いつこの問題が解決するか分からなくなってしまいますよ。

その間困るのはこの講堂を使う研究者たちです。
プロジェクタを完璧に直すことより、研究が滞る方が損失が大きいんです。
完璧に直すことは必要ないんです。
合格点を取ることが大切。
しかも迅速にです。

天井から吊ってあるプロジェクタ四隅にワイヤーを取り付けて、そのワイヤーを斜めに天井に固定し、引っ張りました。
上下方向だけではなく、平面方向にもテンションを掛けて固定してみたんです。
結果は良好。
画像の揺れは1mm程度に収まりました。
これなら客席から見て揺れは感じません。
十分合格点が取れたと思います。
もう明日からこの講堂の使用が可能になりました。
作業してくれた方々に感謝です。

期日までに合格点をたたき出すこと、すなわち「プロジェクト志向」です。
100点じゃなくていい、60点で十分だってことは世の中にたくさんあります。
たとえば入試。
入試でも100点を取る必要はない。
合格点を取ればいいんです。

有井博之『中学受験偏差値40からの合格時間割作戦』にこうありました。

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出そうもない部分を勉強するのは効率が悪い、不得意科目を満遍なくやることも効率が悪い。
こうして捨てて、その代わり残ったところは「これでもか」というほど徹底的にやる(157p)
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ぼくはサイエンスカフェで子どもたちに「好きなことをとことんやろう」と言います。
好きな科目は100点じゃもったいない、200点、300点、400点・・・を目指せ、ってね。
で、好きなことをとことんやっていくと、不思議なことに嫌いなことがなくなっていくよ、と伝えるんです。
なぜ嫌いなことがなくなるか、というと「プロジェクト志向」に他なりません。

たとえば科学者になりたくて、大好きな理数科目ばっかり勉強する。
でも一流の科学者になるには大学に、それも一流大学にはいらなければ困難です。
でも大学入試には、国語や社会科など嫌いな科目もある。
これを避けて通ることはできません。

でも入試って合計点が合格点であればいいわけです。
得意科目で点数を稼げるのなら、その分不得意科目の点数は低くてもいい。
嫌いな科目でも、平均点の半分くらいならごくわずかな勉強で達成可能です。
やりたい科学の勉強のためなら、嫌いな科目で平均点の半分くらいになるまで勉強するくらいは我慢できるでしょう。
やりたいことのために、多少の犠牲は伴うものだからね。
長時間嫌いな勉強を続けるのは無理ですが、短時間ならやれるものです。

で、不得意科目は満遍なくやるのではなく、出題されそうな分野だけ、さらに合格するのに必要な点数分だけやる。
その代わり、その部分だけはとことん完璧に勉強するんです。
確実に最低ラインをクリアできるようにね。
ここでも、とことんは大切なんです。

そんな勉強をすると、嫌いな科目でも面白みがわかってくるんです。
嫌い嫌いって、実は食わず嫌いなんですよ。
嫌いだから勉強しない、勉強しないからわからない、わからないから嫌いになる。
そういう悪循環の中にいたわけですね。
でも、合格最低点を取るために割りきってちょこっと勉強してみる。
すると案外どの教科だって面白いもんだってわかるんです。
面白みがわかると、もうちょっと勉強したくなったりします。
そんなことをやっていれば、嫌いなことがなくなるのも当然なんですよ。

ただし、これは好きなことをとことんやっていたからできることです。
ある分野でアドバンテージがあるからできること。
だから先ずは好きなことをとことんやるのが正道。
そうすれば、好きなことをやり続けるために、嫌いなこともちょこっとやれるだけの余裕が生まれる。
プロジェクト志向なんですよ。

2011年6月14日火曜日

拙速主義で行こう!


こんにちは

このところ設備の保守業務の契約に必要な書類を作成することに集中しています。
もちろん、スパコンの立ち上げのための仕事をしつつ、です。
ほぼ半日はスパコン立ち上げのため、半日は保守業務の仕事をしています。

保守業務とは、たとえばエレベーターのメンテナンス契約など。
年間数回、メンテマンに来てもらって、点検と消耗部品の交換をしてもらう。
それによって常にエレベータを安定に安全に使え、事故、故障を少なくする。
きちんとメンテしていると、寿命も伸びますしね。
だから、保守はしっかりしていかないとならないのです。
ぼくの勤務するキャンパスの建物も完成後1年を経過したので、すぐにでもメンテナンスを始めないとね。

で、どんなメンテナンスをするかを記載した仕様書を2日で1件を目標にザクザクと作成しています。
仕様書ができたら、即業者さんに見積依頼。
今はすべての会社さんに電子メールで連絡ができるので、楽ちんですね。
便利便利。

見積も1週間くらいはかかります。
その期間に別の保守の仕様書を作成。
そしてまた見積依頼。
業者さんから見積が出てきたら、それをチェック。
こっちの予算と合わなければ金額を交渉。
合意出来れば、書類一式を契約担当部署へ持って行き、契約依頼。
こんな風に進めています。

実を言うと、ぼくは保守契約の仕事をこれまでほとんどやったことがありませんでした。
未経験者、初心者なんです。
それなのにザクザク進められるにはワケがあります。
それは「TTP」。
”徹底的にパクる”ってことです。

エレベータなんか、ぼくの勤務するキャンパスだけじゃなくて、他のキャンパスにもあるものです。
ならば、他のキャンパスでも保守契約をしているのは当然。
どんなメンテをしているか、他のキャンパスの担当者に教えてもらえばいい。
仕様書を見せてもらって、つまりは真似しちゃうんですよ。
もちろんそれを自分のキャンパスにフィットするようにアレンジしますけどね。

ぼくはこれまで職場の各キャンパスの研究棟を作る仕事をしてきました。
そのおかげで、各キャンパスの施設担当の人達とも顔なじみなんです。
書類を参考にさせてください、ってお願いすると対応してもらえます。
ありがたいですね。
この時も電子メールでサッと書類が届いちゃいます。
即仕事に取り掛かれますよ。

日垣隆/岡本吏郎『世界一利益に直結する「ウラ」経営学』アスコム¥1400-にこうありました。

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日垣 先日システム・エンジニアの人と、「どんなSEが一番儲かるか」という話をしていました。
「仕事の質が高い人」とか「性格がいい人」とか「記憶力の優れた人」とかいろいろ出たのですが、結局落ち着いた線は「スピードの速い人」なんです。
スピードの速い人が最も安定的に仕事ができるという結論になりました。
いつ終わるかわからない正確な人よりも、多少 バグがあっても時間通りに終わる人、あるいは他の人以上に早く終わる人の方が、優秀ではないかという結論に達したのです。
仕事が早ければ時間的な余裕も生まれるので、仮にバグが出たとしても修正がききます。(82p)
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そうなんです、つまりは「拙速主義」ですね。
仕事もスピードなんです。
速く仕上げれば、時間的余裕もできる。
速く仕上げておけば、誤りがあってもそれを直す時間がある。
誤りがなければ、次の仕事に着手できる。

そして拙速主義で大切なのは、完璧は求めない、ということ。
合格点であればいい。
合格最低点+アルファ程度を狙うべきなんです。
その程度の品質で仕事をするなら、速くすすめることができる。
間違ったとしても、「はいごめんなさい、すぐ直します」で済みます。

ほとんどの仕事は合格点しかもとめられていないものなんです。
完璧にやる必要はない。
完璧は過剰品質になってしまい、費用対効果が合わないんです。
つまりは無駄。
会社で給料をもらって、無駄なことをしてはいけません。
要求水準を間違えているってことです。

加えて、特に初めてやる仕事、慣れない仕事ほど、速くやるほうがいいんです。
速くやって、上司や同僚など経験のある人にチェックしてもらう。
初めてやる仕事、慣れない仕事なんだから、間違いがあって当然。
気楽にチェックしてもらえるんです。
何もできてない状態で相談するより、不完全でも一応仕上げてから相談したほうが、具体的なコメントをもらえるものです。
コメントをもらったらお礼を言って、さっさと直す。

仕上がりが遅くて締切りギリギリだと、相談する時間もありません。
上司に提出して「なんじゃこれ!」ってことになりかねませんよ。
だから拙速主義でぼくは行くんです!


拙速主義のおかげで、好きなことをする時間も生まれます。
そういう時間にあれこれ考えたり、勉強したり、論文を書いたりね。
おかげさまで、電気設備学会賞もGet!

2011年6月12日日曜日

学校が楽しいと病気にならない


こんにちは

おかげさまで溌貴君はいい学校に入り、いい担任の先生に恵まれ、楽しく毎日学校に通っています。
入学以来1日も休んでいません。
ぼくの教師時代の経験でも、学校が楽しいと多少具合が悪くても子どもは学校に行きたくなっちゃうんです。
で、学校で楽しく過ごしているうちに、その具合の悪さもケロリと治ってしまう。
だから、出席率の善し悪しもその学校、その学級の教育力の善し悪しのバロメータになるんだと思っています。

土曜日は溌貴君の学校の参観日でした。
朝は1年生~3年生での音楽集会。
自閉の子を預かる学校ですから、音楽教育にも力が入っていました。
歌もリズム遊びも素晴らしく、メリハリがあってしかも暖かみのある指導でした。

その後、溌貴君のクラスの授業を2時間参観。
1時間目は国語、2時間目は英語。
親が見たいであろう教科を公開して、さすがだと思いましたよ。
担任の先生による国語の授業も、ベテランらしくテンポよく進められました。
ちゃんと名簿を用意して、どの子も必ず指名するよう配慮もありました。
班対抗でしりとりゲームをしたり、笑ったりふざけたりする場面も作る。
暖かみのある授業でした。

見るとクラスの欠席者はゼロでした。
誰も休んでいないのです。
先日としきくんがノロウイルスにやられちゃいましたが、今けっこう流行っているらしい。
でも溌貴君のクラスの子はみんな元気でした。
楽しいから学校に行く、学校に行くと元気になる、元気だと病気に負けない。
そんな好循環が生まれているように思いました。

2011年6月9日木曜日

プロジェクト志向のススメ


こんにちは

やりました!
ついにレーザー発振です!
何ってXFEL=SACLAのことですよー。
http://harima.riken.jp/
こんなにど派手なホームページ作っちゃって、播磨のみなさんの喜びもビシビシ伝わってきますね。
情熱を持ってこのプロジェクトに関わってきたぼくも、とても誇らしい気持ちでいっぱいです。

ぼくの造ってきたインフラ設備もまずまずの機能を発揮していますね。
とはいえ、100点満点の仕事ができた、とも思っていないんですよ。
竣工してからいくつかの不具合があって、その度に直してきました。
ここはああしておけばよかった、こうすればもっと良く出来たのに、と思うところもたくさんあります。
だから100点じゃない。
でもちゃんとレーザー発振まで漕ぎ着けたということは、合格点は取れている。
60点はきっちり取れているという自信と自負はあるんです。

川口淳一郎『高い塔から水平線を見渡せ!』NHK「仕事学のすすめ'11.06」¥550-にこうありました。

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間違えていけないのは、プロジェクトと研究は違う、ということです。
プロジェクトというのは、期限内に終わらなければならない。
いくら時間がかかってもいいから究極の答えを求める研究とは違うのです。
出た答えが必ずしもベストではないと分かっていても、それが妥当なものであれば採用して次に進まなければならない。
プロジェクトというのは、その繰り返しです。
とにかく期限は絶対ですから、たとえセカンドベストであっても、60点であっても、いかにそれを確実にタイムリーに決めていくかが大切です。
そして、その過程の議論は最大限尊重していかなければいけないのです。
これこそが、私が「はやぶさ」のプロジェクトを推進する上で学んだ、組織運営の基本です。(25p)
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ホントに川口さんは研究者ではなくエンジニアだと思います。
100点は狙わない、だけど確実に60点、合格点はGetする。
プロのエンジニアですねー。
ってぼくが言うんじゃちとおこがましいですけどね。

そう、プロの仕事は100点満点が必須じゃないんですよ。
合格点を100%の確率でたたき出すこと。
だって、プロジェクトというのは、個々の仕事の集積だからです。
それもそれぞれの仕事は「AND」で結ばれているんです。
SACLAのインフラ設備で言えば、

 床が揺れない
  AND 電源が安定している
   AND 空調がうまく制御されている
    AND マシン冷却水の温度が一定である

なんです。
そして、ANDマシンが正確に稼働する、とつながるわけです。
これら個々の部分が一つでもコケたら、プロジェクトは成功しません。
いくらマシンが100点であっても、床が揺れてしまっては、つまり建家の出来具合が不合格点ではダメなんです。
技術に完璧はありませんが、許容できる範囲に収める、すなわち合格点を確実に取ることが大切なんです。
それがプロのやり方です。

逆に言えば、ばらつきが大きいのはアマの仕事。
ある部分が100点でも、他の部分が40点だったりする。
それではせっかくの100点は生きないんです。
すべての仕事はANDで結ばれているため、40点の部分で全体がコケてしまうからね。
バランスが悪いんですよ。

面白いことに、アマの人ほど100点狙いするんですよ。
アマの人ほど100点を要求する。
100点を狙うには時間と労力と資源を使います。お金もね。
一定の時間、一定の予算、一定の人員の中で100点を狙うためには、ある狭い部分にだけ注力しないとなりません。
そうすると、それ以外のところに目がいかなくなる。
全体がそれでコケてしまうのです。

その意味で、XFEL=SACLAでの建家建設はまずまずプロの仕事ができたって自負しています。
なんとかかんとか合格点を摘み上げることができた。
それがレーザー発振で証明された。
だからとても嬉しいのです。

人生というのはプロジェクトだと思います。
期限、タイミングも大切ですし、お金だって限られています。
自分という資源も有限です。
これらの制限のあるなかで、いい人生を創っていかなくちゃならない。
その時に、100点は狙わない、でも合格点は確実にたたき出す、という考え方は有用です。

レーザー発振成功のプレス発表があった後、すぐに一緒に設計、施工をしてきたスタッフのみんなにも知らせました。
プロの仕事をありがとう、って伝えるために。
そしてぼくも含めてこの仕事に関わってきた人たちが、もっといい人生を創っていけるように。
ハッピーですねー。

2011年6月7日火曜日

話の主導権を握る技術

こんにちは

「関口君だと検査にならないからな。ひとりでしゃべっちゃんだから」

本所の契約担当部署で仕事をしていたとき、会計検査の検査対象の最終指定があって、ぼくの担当した仕事は検査に当たらないってことがわかった時です。
そこにぼくの元上司、よく怒ることで有名な我が師がいて、そう言われましたよ。
褒め言葉ですな。
わはははは。

確かにぼくは説明好き。
検査員の何倍もしゃべっちゃいます。
もちろん、検査員の質問には正対しつつですがね。
聞かれたことにはちゃんと答え、それに付け加えて関連事項も話しちゃう。
すると検査員も聞くことが早々となくなっちゃって、「ではもう結構です」ってことになって検査終了になるわけです。

中村友妃子/田村綾子『クレーム対応のプロが教える心を疲れさせない技術』青春出版社¥750-に、話の主導権を握る技術が書いてありましたので紹介しますね。

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実は(話の)主導権を手に入れる人は知らず知らずのうちに以下の3つのことを実践しているのです。

①相手より先に
②はっきりとした声で
③長い文言であいさつ

をしていたから、会話の主導権を自然に誰にも気付かれずに手に入れることができるのです。(165p)
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なるほどなるほど。
たしかにぼくも実践していますよ。
普段はボソボソと話すことが多いぼくですが、検査や自分がイニシャティブを取るような会議では、ちょいと声に張りを持たせて滑舌良く話します。
挨拶も先にし、自分がどういう立場なのか、どういうことをやりたいのかをおりまぜて話してしまうのです。
相手が何者かが分かってからのほうが話も分かりやすくなりますからね。

ぜひお試しを!

2011年6月5日日曜日

人生は予習復習


こんにちは

ぼくは200単位以上取得して大学を卒業しました。
大学卒業必要単位数は125単位くらいですから、そうとうがんばったでしょ。
エヘン。
と、威張っていたんですが、ホントは威張れることでもないらしいんです。

大学に入ってびっくりしたのは、空き時間が多いこと。
必要単位だけだと、1日3コマも講義を受ければ十分。
かなりヒマなんですよ。
ぼくは昔から貧乏性だったので、ヒマが嫌い。
なので、毎日目一杯講義を受講することにしたわけです。
結果として、単位だけは人より多く取ることができました。

ところが、卒業して何年もしてから知ったんです。
大学の単位は、講義時間の他に講義時間と同じだけ予習復習をすることが前提になっているんだそうです。
そのくらい自分でも勉強しないと講義には着いていけない。
あら、びっくり。
もちろん好きな勉強や自分の所属する学科の勉強は、まあまあ予習復習していました。
でもそれ以外の大部分の講義は、講義時間だけ。
講義時間もきちんと勉強しておらず、好きなことを内職してました。
反省。。。

そんなわけで、単位数は多いけれど、それに見合った学識が得られたかと言うとまるでダメ。
大学の勉強はきちんと予習復習をして講義に臨むものだ、ということを誰も教えてくれないんだもん。
先輩も、教授もね。
イジワルだねー。
というか、そんなこと自明なことで、知らないのはぼくだけだったのかも??
まあ、広く浅くいろんな学問のタネは身に着けられたので、得はしましたけどね。

教師になったり、予備校で教えたり、今も若い技術者の人たちに勉強を教えたりして分かったこと。
小学校の勉強でも、塾での勉強でも、資格取得のための勉強でも、きちんと予習復習しないとしっかりとした学力は身に付かない。
小学校はもちろん、中学、高校なら当然、学校の授業は予習復習を前提にカリキュラムが作られているんです。
ぼくは塾や予備校でも教えていたことがありますが、いくら授業時間生徒さんを盛り上げ、笑わせ、分かった気にさせても、予習復習しない生徒さんはその場限り。
学力として定着しないんですよ。
それは資格試験の勉強でも同じなんです。

社会人になっての仕事でも同じなんですよ。
仕事も予習復習が必要なんです。
はじめてやる仕事、ポイントとなる重要な仕事、一発で決めなくちゃならない仕事。
きちんと予習復習をすると、仕事も上手くやれるんです。
だから社会人だって、予習復習する時間は必要なんです。
そのための時間を確保できないと、一流にはなれません。
そういう意味で、ぼくはあまりに長時間の残業には反対なんです。
残業は予習復習の時間的余裕を奪いますからね。
残業が長い人は二流にしかなれないんだと思っているんです。

それらを考えると、大学で空き時間が多いのは正解なんです。
空き時間は予習復習する時間として用意されているものだから。
そこで遊んじゃったり、取っても取らなくてもいい必要もない講義を受講してはいけないんです。
ちゃんと予習復習して講義に臨む。
それが高等教育を身に着ける習慣なんですね。

とすると、高校の授業は忙しすぎるかもしれません。
きちんと予習復習する時間を生徒に与えるようなカリキュラムが望ましいからです。
荒井一博『学歴社会の法則』光文社新書¥740-にこう書いてありました。

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普通高校の教育は、教科書を理解させるだけでほぼ十分であると私は考えます。(ただし、教科書以外の一般的読書は行われる方が好ましいでしょう。)
そのかわり教科書は、内容・説明・練習問題などの点で、しっかりしたものでなければなりません。
生徒が独力で予習・復習のできるものである必要もあります。
授業時間数や授業方法も再検討が必要であると考えます。
最近の学力低下論では少ない授業時間が問題視されていますが、高校教育に関しては、授業時間を短く
して生徒に自分で勉強する十分な時間を与え、自分で勉強する習慣をつけさせることのほうが重要です。(261p)
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我が家の子育て方針の一つは、子どもにはヒマが必要だ、です。
お稽古ごとや塾、スポーツ少年団などで、いたずらに子どものスケジュールを満杯にしない。
それはダラダラする時間を子どもに与えるだけじゃありません。
もちろん、時にはダラダラ過ごす時間だって必要です。
でも子どもって、ダラダラするだけじゃ満足しないんだと思うんですよ。
ヒマがあるから何か自分で始めようとするはず。
自分であれこれ考えて行動するようになると思うんです。

ぼくも自分自身の反省を元に、我が子たちには「学校の授業がよく理解できて、楽しく受けられるコツは予習復習だ」ってことを伝えていきたいです。
で、ヒマな時間は予習復習をするためにも存在していることを気付かせたい。
予習復習をして学校で受ける授業をしっかり身に着けると、自分自身のスキルが上がります。
スキルが上がると、どんなことも短時間に合理的にこなせるようになります。
すると時間の余裕ができる。
自分のやりたいことをやるためには、時間とスキルは欠かせません。
それはきちんとした予習復習が生み出してくれるんですよ。


空調衛生工学会学会賞を受賞したことを、施設部担当理事に報告に行きました。
理事にも喜んでもらえましたよー。
これでますますやりたいことがやれるようになるかも!

りくろーおじさんのチーズケーキが美味い!


こんにちは

最近、新幹線で新大阪から東京へ帰るときの定番です。

 りくろーおじさんのチーズケーキ
  焼きたてふんわり、直径18cmジャンボサイズ、\588-
  http://www.rikuro.co.jp/cheese.html

新大阪の駅(在来線構内にお店があります)でこいつを買い込み、のぞみに乗車。
発車と共に開封し、本を読みながら少しずつちぎっては食べる。
東京までの2時間半、すこぶるシアワセでございます~。
ぜひお試しを!

ハッピーは人のためならず


こんにちは

金曜日は和光で仕事。
今ぼくは計算機構の保守運営の契約を始めているところですが、既に同じようなことをやっている和光研での実績を教えてもらうため。
だって仕事は「TTP(徹底的にパクレ)」ですからねー。
契約担当部署で過去の契約書をコピーをさせてもらいました。

その時、来週行われる和光研会計検査の検査対象の最終版の連絡が来ました。
残念ながらぼくが担当した仕事は当たりませんでした。
あ~あ、来週はずっと我が家で過ごせると思ったのにー。
ま、予定していた時間が大幅に空きましたから、保守契約もガンガン進められますよ。
さらに時間も余るでしょうから、夏の電気設備学会で発表する論文も書けますねー。
どっちに転んでもシメタです!

で、一仕事終えてから、会計検査に当たるかもしれなかった今年2月に完成した脳神経回路遺伝学棟をぶらぶら見て回りました。
ぼくは自分の造った建物を、ぶらぶら歩くのが好きなんです。
完成したあとどんな風に使われているのか見て歩くんです。
使い方が分かれば、次に同じ分野の研究棟を設計するときに役に立ちますしね。
それとそこで働く研究者の人たちにも、何か困っていることはありませんか、って声をかけたり。
トラブルがあればすぐ対応できますし、たいていは設計意図を説明すると理解してくれます。
それがまたぼくの腕を上げてくれるわけです。

ぶらぶら見て回っていたら、この研究棟の計画段階から一緒に検討をしたチームリーダーに会いました。
もう新しい建物で仕事を始めていたんです。
何か困ったことはありませんか、と聞いたら、

 今のところ順調に立ち上がっています
 いい建物を造ってくれてありがとう

と言ってもらいました。
ハッピーですねー。
超ゴキゲンになりましたよ。

このゴキゲンをぼくだけで独占してはもったいない。
この研究棟を一緒に造ったスタッフにも知らせようと思いました。
会計検査に当たらなかったことも伝えないといけないしね。

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元気ですかー。

来週、和光研の会計検査がありますが、脳神経回路棟電気工事は検査に当たりませんでした。
あら残念。
ま、電気工事は嘘偽り無く真っ当に正直に造りましたから、アヤシイところはないってことでー。
建築と機械は当たったけどね。
あはははは。

もしかすると年度内にもう1回和光の会計検査があるかもしれませんが、たぶん今回で脳神経回路棟はおしまいになり、検査対象から外れると思います。
官庁工事は会計検査が終わって初めてホントに竣工ですから、それも無事クリアしたってことですね。
ありがとうございました。

おまけに、竣工後の不具合もないって立花から聞いています。
今日も建物内をブラブラ見て歩きました。
この建物の計画に最初から係わっていたTLにも会いました。
TLからも「いい建物を造ってもらってありがとう」って言ってもらいましたよ。
重ねて感謝します。

では来年3月の1年目瑕疵担保検査でお会いしましょう。
それと、お願いしていますように10/8和光全停電(年次点検)時の非常用発電機の様子見(メーカー手配)を忘れないでね。

ではでは。
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さっそくみんなから返信が届きました。

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ご無沙汰しております。
確かに私たち施工者が会計検査でどの様な事が起きるのか等、なかなか解りかねるのですが当然何か有れば追加資料の作成など必要になる事は理解しておりました。
なので、やはり正直ホッとします。
また、建物の使用にも不便など無いようで重ねて安心させて頂きました。
こう言う連絡って殆ど私たちの耳には入らないのですが、今回の様にわざわざ連絡頂き非常に嬉しく思っております。
発電機の様子見や瑕疵担保検査時私が行くかは解りませんが、また別のプロジェクトなどでお会いできる事を願っております。
仕事以外のイベント等も連絡頂ければなるべく参加させて頂きたいと思っております(子供を連れて)。


いつもメールありがとうございます。
ゴミ?メール読むたびに自分の知識と知恵が増えているようで楽しみに読ませていただいております。
以下、余談
ご存じだと思いますが、現在、病院の電気工事を担当しております。
理化学研究所の工事と同様の設備が多く、去年検討したことと同じ様なことが沢山あります。
検討するときいつも、関口さんがおっしゃったことを思い出しています。
キュービクルにしても、発電機にしても、直流電源装置にしても、納入仕様書を提出したときに言われたこと、今までそんなことまで検討してなく提出していたものも、あのように教えていただけると電気設備の何たるかを大変勉強させていただきました。
まだまだ未熟ではありますが、去年教えていただいたことを再度復習しながら自分の知識としたいと思っております。
また、更に余談ですが、現在若い社員が3名おり、若手教育も任されております。
関口さんのように帝王学を教えるにはまだまだ未熟すぎますが、以下のようなことを思い出して教育しています。(勝手に使用してすいません)m(__)m
我々代理人は、右腕にお金、左腕に技術でしたっけ??
マスクをいつもしている人は阿呆だ??etc・・
またお会いできる日を楽しみにしております。


お世話になっております。
元気にやっております。
会計検査は設計事務所は何度か立会いさせて頂いた事はありますが、いつも緊張しておりました。
今回は当らなく少しほっとしておりますが、今回の物件は関口さんがおっしゃるように電気設備はアヤシイところなく作成しておりますので自信持って大丈夫だと言えるとおもいます。
4月には関口さんのブログにも私のメールが掲載されましたのにご返信しなく申し訳なかったと思います。
嫁も探すようがんばっております。
ブログ・メール共に毎回楽しく見ております。
1年検査ではまた会うのを楽しみにしています。
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嬉しいですねー。
スタッフのみんなにもハッピーをお裾分けできましたよ。
そして彼らから返信をもらって、ぼくもますますハッピーになれました。



写真はその脳神経回路遺伝学棟のラボ。
研究もゴキゲンに開始されたのが伝わってきました。
よかったよかった。

2011年6月2日木曜日

スキマを埋めろ!

こんにちは

神戸での単身赴任も2ヶ月が経過しました。
仕事の方もまずまず順調で、昨日から兼務になっている研究支援部の仕事にも着手することができました。
運用技術部の仕事の方は、優秀なスタッフに支えられてこの2ヶ月でうまくまわるようになってきましたので、ぼくも時間的な余裕ができてきましたからね。
おかげさまで我がスタッフたちの運転するスパコンのインフラ設備は、まずまず順調に稼動しており、スパコン立ち上げは支障なく進んでいます。
スタッフたちも楽しげに仕事をしていて、とても安心です。
ぼくの出番もなくなってきましたよ。
今月、来月とちょっと仕事が滞っていた研究支援部の担当する施設のルーチンを造り上げたいと思っています。

誰もが能力を持っている、というのがぼくの持論。
能力を発揮できないのは、コントロールが上手くいっていないだけ。
上司からのコントロールだったり、自分自身でのコントロールだったり。
コントロールが上手くいかない主な原因は、仕事の定義がなされていないこと。
自分の仕事は何なのか、権限を有するのはどこなのか、どこまでに責任を持つ必要があるのかが不明瞭なだけなんですよ。
その切り分けをスパッとやってあげれば、あとはどんどん自律的に仕事が進むようになるんです。
仕事がうまく回るようになると、仕事が楽しくなります。
楽しくなれば、ご機嫌になります。
ご機嫌になれば、さらに能力を発揮して、自分を高めていけるようになるのです。
その人の得意な部分を把握して、得意なところで能力を発揮してもらう。

ぼくの今の職場での立場は、部付きの調査役。
ラインではなくスタッフ職です。
組織上、上司は部長、部下はいない。
部長からの特命事項だけやる、というポジションです。
で、ぼくの特命事項は何かと言うと「スキマを埋めろ」だと思っているんです。
部長は何も言ってくれていませんが、自分で勝手にそう思っているわけ。

トラブルというのはスキマから生まれるものです。
スキマとは、誰の仕事かよくわからないで、誰もが自らやろうとしない仕事。
野球で言えば、ライトとセンターの間に落ちてくるボールみたいなものですね。
どちらの守備範囲かわからない場所に落ちてくるボール。
上手くいっていないチームだと、そこは俺の守備範囲じゃない、とライトもセンターも思っているので、ボールはスキマに落ちてしまう。
こういうグレーゾーンをなくすことが大切なんです。
上手くいっていない組織は、グレーゾーンが見えていないんです。
あるいは見えていても、誰もが見ようとしないんです。
だからそこでトラブルが発生するのです。
上手くいっている組織は、グレーゾーンがない。
あるいはあっても、互いに協調してカバーできる。
ぼくはそういう場所を見つけて、仕分けてやる役割だと思っているんです。

スキマでトラブルが発生すると、担当者はやっぱり怒られるわけですよ。
当人にしてみたら、え~そこも俺の守備範囲だったのー、知らなかった~、ということになります。
そういうのがたくさんあったら、たまりませんよね。
地雷の埋まっている道を歩くようなものだから。
あんまり地雷を踏みまくると、自分の進む道の地雷だけじゃなく、あらゆる場所にあるかもしれない地雷を恐れて、前に進めなくなっちゃうんですよね。
人は叱られてばかりじゃ不機嫌にもなるし、能力を発揮しようもなくなってしまいます。

研究支援部のスタッフの人も、きちんと自分の仕事の定義がなされ、活き活きと楽しく自信を持って仕事ができるようになってほしいですね。
さあ、今日もがんばろっと!

2011年6月1日水曜日

地震が来たら机の下に隠れろ

こんにちは

東日本大震災。
震源地から離れた東京でも被害がありました。
その大部分は天井崩落。
ユーチューブにはこんな画像がアップされています。
http://www.youtube.com/watch?v=gp-w51cB-Ao&feature=related
この画像の科学未来館は、今現在も復旧工事のため閉館しています。
東京で地震による死亡者が出たのも天井崩落が原因でした。
そこも天井の高い劇場でした。
吹き抜け天井や劇場、ホール、体育館、プールなど、天井の高い部屋は危険です。

ぼくは数年前から(なかなか合格はしませんが。。。まあ、趣味ですから^^;)1級建築士試験の勉強を続けています。
建築士も法定資格ですから、法令、つまり建築基準法をよく理解しておくことが重要です。
建築基準法は、過去の災害を反映させて法令を整備してきたものです。
特に大きな震災がある度に、条文が見直されたり、付け加えられたりしています。
だから、建築基準法を守って建物を建てれば、過去に起こった地震と同等の地震であれば、まず大丈夫。
建物が崩壊するようなことはありません。

ところが、建築基準法を読み込んでいってわかったことがあるんです。
建築基準法で耐震基準はしっかり法制化されています。
しかも「建築確認申請」という制度もあって、建設工事を始める前に行政によって法令を満たしているかどうかチェックをし、受理されないと工事に着手できないようになっています。
工事が完了したときも、大規模建築の場合工事中も、申請どおりに造られたかのチェックがなされるのです(姉歯建築士事件のような抜け穴もありましたが)。

ところが、法制化されているのは構造・躯体のみなんです。
壁や天井など、内装材に関する耐震基準は法令化されていないのです。
まったくそれぞれの設計に依存しているわけです。
しっかり造ろうが、簡便に造ろうが、それぞれの設計に任されている。
ですから、簡便に作られた天井が地震で崩落するのも当然なのです。

以前の地震でプールの屋根が地震で崩落した事故があり、その反省をもとに「施工管理指針」としては、天井の耐震方針は決められています。
でもあくまで指針でしかなく、法的な拘束力はありません。
指針が出される以前に造られた建物への遡及もないのです。
よって、今のところ、地震があったら天井は落ちてくるものと思っていたほうがいいのです。

小学校の避難訓練で、地震が起きたら机の下に隠れる、という訓練をした経験を多くの人がしているでしょう。
あれには合理性があったんですね。
学校の教室程度の天井高さ=3mであれば、天井が崩落しても机で十分その衝撃から身を守ることができます。
オフィスであっても、机の下に隠れれば、まず安全です。

危険なのは、高い天井の場所で隠れる場所のないところ。
高い場所から落下してくる天井は、凶器でしかありません。
当たったらイチコロでしょう。
地震を感じたら、素早くそこから避難するしかありません。

これから天井についても耐震基準が造られ、建築基準法が整備されていくとは思います。
でも、地震で天井は落ちてくるものだ、と覚えておくほうがいい。
すこしでもリスクを避け、自分の身を守るために。