2012年1月30日月曜日

根気を作る


こんにちは

世界最速のスパコン「京」を説明する時に、こんな話をします。

 「京」で1日で終る計算を
  パソコンにやらせたら
   どのくらいかかると思いますか。

パソコンもピンきりですから、たとえばハイエンドパソコン、インテルコアi7というCPUが入っているパソコンで計算してみましょう。

今のパソコンの性能もすごくて、20年前のスパコン並みの計算速度が出ます。
Core i7(Sandy Bridge) は1チップに6コア入っています。
動作クロックは3.3GHz。
1クロックで8回の計算ができちゃいます。
よって、Core i7の理論計算速度は

  8 FLOPS/Clock × 3.3GHz × 6コア=158.4 GFLOPS
                  =158.4×10^9FLOPS

となります。

「京」の計算速度は10.51PFLOPS=10.5×10^15FLOPSですから、割り算すると

 10.5×10^15÷158.4×10^9=66351

となりますから、「京」が1日で出来る計算をCore i7パソコンで実行させると、

 66351日÷365=182年

かかっちゃうことになります。
182年もかかる計算に実用的意味はありませんよね。

さらに、パソコンは事務機器でもあるので、計算専用ではありません。
以前のパソコンは、作業中突然「ジャン!」なんて音を出してしばしばフリーズしちゃいましたよね。
最近のパソコンはめったにフリーズしない。
なぜなら、最近のパソコンはそのCPUパワーの9割も、動作の安定性のために使っているからです。
なので、近年は新しい機種のパソコンと買い換えたとき、速度はそんなに変わったように感じないはず。
その代わり、体感的にも安定性がよくなったと感じるのではないでしょうか。

パソコンが9割ものCPUパワーを安定性に使っているということは、計算には残りの1割しか使えないということです。
すると、「京」で1日で終る計算をパソコンでやらせたら、

 182年÷0.1=1820年

もかかっちゃうことになります。
この「京」の圧倒的、絶対的な計算速度差が、研究・開発のスピードにつながるってわけです。

研究・開発には試行錯誤が必要です。
スピードが速ければ、何回もトライすることができます。
それが研究者のモチベーションも上げます。
だって、何日も何ヶ月も計算した結果、それが使えないものだったらがっかりするじゃないですか。
もう1回、再挑戦しようという気力も萎えます。
でも、あっという間に計算できるなら、たとえその結果が悪かったとしても、もう1回やり直してみようという気力が湧きます。
こんな話をすると、「京」の必要性についてみなさん納得してくれます。

最近の労働心理学の研究で、こんなのがあります。
根気がある人とはどういう人か、という問題。
普通、根気がある人は「ひとつの仕事を長い時間コツコツとやり続ける」というイメージがありますよね。
ところが、研究によると

 根気のある人ほど、作業時間が短い

のが分かったそうです。
ちょっとびっくりしますね。

作業時間が短い=仕事のスピードが速い、ということです。
スピードが速いので、やり終えるまでの見通しがつくんです。
見通しがつけば、仕事を貫徹するだけの自信が生まれます。
集中して仕事をすることができるわけですから、根気も生まれるのは当然でしょう。

根気のない人は作業時間が長い。
なぜならいつ終わるか自覚できないからです。
終わらせるまでのプロセスが見通せないから、とりあえず仕事に着手して、ダラダラやる。
とてもとても集中なんかできません。
結果として作業時間は長くなってしまうのです。

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