2012年3月24日土曜日

時には徹底的に

こんにちは

水道局から連絡があった。
配水系にあるバルブ保守のために、我社が受水している工業用水の取水河川を一時的に変更する、とのこと。
つまり、水質が変わる。
我がスタッフに「この変更が我が社の設備に影響がないかどうか調査し、判断するように」と指示した。

ぼくはスタッフに指示する時、調べるだけじゃなくて判断もしろ、と言う。
なぜなら判断を伴わない調査は上滑りになりがちだからだ。
判断するためには判断基準が必要だ。
判断基準があれば、何を調査すべきかが明確になる。
何に重点を置いて調査すべきかが明らかになるわけだ。

調査は判断のための「手段」なのである。
目的はあくまで判断。
調査しろ、とだけ指示すると、調査が目的化する。
すると、ポイントがずれた調査になってしまったり、どうでもよい項目まで細々と調べてしまい、時間ばかりを浪費する。
このような調査は、ちっとも判断に役立たないのだ。

最終的にはぼくが判断するとしても、まずは担当者が判断しなくてはならない。
判断できるように材料を揃え、ロジックを構築しなければならないのだ。
一見大変そうであるが、実はその方が後々ラクなのである。
なぜなら判断するためには、しっかりとした知識が必要になるからだ。
つまり「勉強」。
自分で勉強したものは、確実に実力を上げる。

なぜそうなのか、なぜそうしなくてはならないのか、原理原則まで遡って考える。
そのためには、そのことに関する深い理解がないとできない。
深い理解ができ、原理を把握し、確固たる知識が身に付けば、以降判断を間違えることがなくなる。
そうなれば、完全に「任せる」ことができるようになる。
自立、自律できるようになるのだ。

ぼくはOJT(オンジョブトレーニング)を信用していない。
仕事はOJTで覚えていくものではあるが、それだけではいけない。
OJTでは根本の理解を得ることができないからだ。
たしかにOJTだけでもルーチンの仕事はこなせるようになる。
ルーチンの仕事をしているだけなら問題はない。

でもイレギュラーなことがあったり、新たな仕事に取り組む時にはOJTで得たスキルだけではまったく不足なのである。
なぜそうなのか、なぜそうしなくてはならないのか、これからどうすればいいのか、原理原則まで遡って考えることができないからだ。
つまりは、実力が身に付いていない。

OJTだけで年齢だけ重ねた人は、一生「作業員」のままである。
それは自ら判断できないからだ。
判断できないから、誰かから指示をもらわないと動けない。
職業人としては非常につまらない人生だと思う。
まあこれは価値観の問題でもあるので、他人に強制すべきことではないのかもしれないが。

とは言えOJTをバカにしてはいけない。
OJTは「気づき」の宝庫だからだ。勉強ネタ満載なのである。
先輩からある仕事を教えてもらう。
教えてもらったとおりにやるのは当然だ。
でもそこで一歩踏み込んでみる。
なぜそうしなくてはならないのか考えるのだ。
そして自学するのだ。

自学し、原理原則をつかむ。
そうすると仕事の意味がわかってくる。
わかってくれば自分で判断し行動できるようになる。
意味もわからず誰かの指示通りに働くだけの状態から脱却できるのだ。
これがプロフェッションへの第一歩だ。

OJTで仕事を教えてくれる先輩諸氏に、あれこれ質問してもいいが、たいていは嫌われる。
ぼくも若いころそれで損をした。
OJTだけで仕事をしてきた先輩たちも、ほとんど原理原則が身に付いていないのだ。
だから質問されると困るのだ。
不愉快になるのは、自分の実力のなさが露呈するからだ。

もちろん仕事はそれなりに忙しいから、いちいち原理まで遡って教える程の余裕はないことも確かだ。
でもその余裕のなさに甘えてしまったのが、OJTだけの人。
どこかで時間を見つけ、時間をやりくりし、時には勤務時間外も使って自学する。
そういうコトの積み重ねが必要なのだ。

小宮一慶『バカになれる人はバカじゃない』サンマーク出版¥1300-から引用する。

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徹底的にやるというのは、成長するためのキーワードです。(略)
徹底してやるというのは、自分が持っている力を100%出すことです。
100%を続けていると、実力が少しずつ上がってきます。
そしてある一定のところまでいくと、世間が評価してくれるようになります。
そこまでいけるかどうか。(74p)
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そう、時には徹底的にやってみるのがいい。
水質が多少変わって、それも数日だけなら、何もしなくても設備に影響することはないだろう。
でもこのチャンスを活かすのだ。
この機会に水処理について徹底的に学んでみる。
原理原則まで理解してみる。
そうすれば、水処理に関するプロフェッションになれるのだ。
これからどんな状況に変化しても、水処理に関しては判断を間違えなくなる。
自信を持って仕事をすることができるのだ。

小宮氏はこうも言う。

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ひとつのことを徹底してできる人は、また別のことも徹底して、極めていくことができます。
結局、ひとつのことを徹底してできない人は、何ひとつ、人生においてなしえないのです。(74p)
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ぼくはそう願って、スタッフに指示を出しているのである。

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