2012年8月16日木曜日

大学院がアブナイ。。。

こんにちは

知り合いの研究者(理系)からメールが届く。
1年ほど前に准教授として二流大学(ぼくが卒業した大学程度)に赴任した。
「学生にふりまわされて、自分の研究ができない」
おやおや。

日本の大学が,大学院重点化という政策に乗っかって久しくなる。
それ以来、日本の研究パフォーマンスは良くなったのだろうか。
否、あんまり。。。なのである。
なぜだ。

理系の大学での研究は、大学院生の(ただ)働きによって支えられている。
一流大学が研究成果をバンバン出せていたのは、もちろん教授も優秀なのであろうが、若くて優秀で体力もある大学院生がたくさんいたからだ。
理系の大学院生は、その意味で奴隷労働者だったのである。

だから、二流大学の教授があまり研究成果を出せなかったのは、教授自身がダメなのではなく、二流大学には大学院が設置されておらず、奴隷を使うことができなかったからなのだ。
二流大学の教授はこう願った。
「ああ、うちにも大学院生がいてくれたらいいのに」

もちろん、一流大学の教授だって願ったはずだ。
もっと奴隷が欲しい!

願いは叶った!国の施策として、大学院重点化が決まった。
二流大にも大学院が設置され、一流大の大学院の定員は2倍以上になった。
東京大学など、学部生より大学院生の方が多くなっちゃったのである。

教授たちも大学院生(という名の奴隷)獲得に励んだ。
どんどん大学院へ学生(実は奴隷にしたい人材)を入学させた。
先週学会で大阪大学に行ってたんだけど、阪大理学部卒の9割もの学生が大学院へ入学するようになってしまっているって。
それでも定員割れなので、他大学からも集めなくちゃならない。
もうそうなったら学生の取り合いなのである。

ところが困った。
奴隷であるはずの大学院生が、あまり、いやちっとも働かないのである。
それどころか、面倒ばかりかけるのだ。
いやいや、面倒をちゃんと見てくれと甘えまくってくるのだ。
それでいて、学位をくれ、と言うのだ。
いけしゃあしゃあと。

二流大学はもっと困った。
定員が増えた一流大学が、ちょいと優秀な学生を根こそぎ引っこ抜いていくからだ。
学生だって、二流大学でもらう学位より一流大学での学位の方が嬉しい。
かっこいいもんね。

学生だってうすうす感ずいているのだ。
二流大で学位を得たところで、未来はない。

実はこれは錯覚なんだけどね。
一流大だろうと二流大だろうと、きちんと研究能力を自分で鍛えたかどうかが重要で、どの大学で学位を得たかは関係ないのだ。
でも、研究したくて大学院に行くわけじゃない学生は、そんなことは思わないのだよ。

だいたい、売り手市場と買い手市場では、優位に立つ方が逆転する。
今や大学院に入学してくる学生は、完全なる売り手市場。
学生の方が立場が上。
教授が学生に過酷な労働を命ずることなんかできやしない。

こうして大学院生は増えた。
でも研究のためにその身を捧げてくれるような学生は増えなかった。
逆に、教授は大学院生の面倒に手間がかかるようになってしまった。
研究時間は返って減ってしまったのである。



阪大キャンパスをうろうろしたり、文科省科学技術政策研究所の以下のレポートを見たりして、今の大学院教育ってちゃんと機能していないよなあ、って思った次第。
http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/mat213j/pdf/mat213j_1.pdf


余談ですが、我が子たちが大学院に進学したいと言ったら、こう言うことにします。
「日本のはダメだよ。外国に行きなさい。それなら許す」

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