2013年5月7日火曜日

記憶力の鍛え方


勉強も仕事も、記憶力の有無は重要だ。
記憶力がないと勉強もできるようにならないし、仕事もダメだ。
だって、勉強も仕事も「積み上げ」だから。
以前のことを覚えていなければ、積み上げることができない。

記憶力よりも思考力のほうが大事だ、という言説をよく聞く。
確かにそのとおりなんだけど、そう言っている人はどのように思考力を伸ばせばいいのか、ちっとも言ってくれない。

実を言えば、思考力の基礎は記憶力なのである。
それは脳科学が明らかにしている。
脳はメモリベイスドアーキテクチャ(記憶を基盤として働く装置)であることがわかっている。
つまり、記憶を元にし、それを操作することによって、人は思考しているのだ。
すなわち、記憶のない人に思考はできない。
記憶していることがある程度蓄積されていないと、思考力も発揮できないのだ。

ではどうやって記憶力を鍛えればよいのか。

ぼくの友人の小学校教師宮内主斗氏はこう授業する。
発問、まとめなどを板書する。
これはどんな教師でもやっているだろう。
宮内氏のやり方はこうだ。
まず、板書することをそのまま言葉で言う。
言った後に板書を始めるのである。
子どもたちは、先生が言った後に先生が板書すると同時にノートに書き始める。こうすると、先生の言ったことをいったんまるごと脳に記憶せざるを得ない。

いったん頭に入れ、それをノートに書くことによって再生する。
これが記憶力を鍛えるのだ。
いったん頭に入れる、というところがミソである。

もちろん、それができない子もいる。
そういう子は、覚えきれなかった部分は先生が書く板書を見ればいいのだ。
宮内氏のクラスでは、こういう訓練を繰り返すことによって、先生が板書をし終える前に子どもたちはノートし終えるようになるのだそうだ。

当然ながら、教師の側も板書速度を変えているということだ。
最初は早く板書し、覚えきれなかった子どもがそれを見られるようにする。
だんだん遅くし、どの子も先生より早くノートできた、という経験ができるように。
意図的に成功体験を積み上げていくことも重要。
教育には演出も必要だからね。

ぼくの友人の小学校教師山田洋一氏はこう授業する。
子ども同士、おとなりの席の子と話し合いをさせる。
これはどんな教師でもやっているだろう。

山田氏のやり方はこうだ。
話し合いをした後、自分の意見ではなく、一緒に話し合ったお隣の子の意見を発表させるのだ。
こうやると、隣の子の話をよく聞き、それをいったんまるごと脳に記憶せざるを得ない。
いったん頭に入れ、それを発表することで再生するのだ。
これが記憶力を鍛える。

いったん頭に入れる、それをそのまま再生する。
原理は一緒なのである。

では大人はどうやれば記憶力を鍛えられるか。
ぼくはこうしている。
試写である。

本を読みながらか面白い部分、役に立つ部分に線を引いたり、ページの角を折ったりする。
それをあとから試写するのだ。
昔は手書きでノートに書き写していたのだが、今はパソコンで打ち込んでいる。

試写するときは、なるべく文単位、文章単位でアタマにいったん入れるのだ。
そして本を見ずに、パソコンに覚えた文を打ち込む。
これで記憶力が鍛えられる。

おまけに書き写すことによって、本の内容もより鮮明に記憶に残る。
記憶していることが多いほど、思考も深く多様にできるわけであるから、一石二鳥なのである。

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